細胞培養工程における分析評価Analytical Evaluation in Cell Culture Process

近年、再生医療分野の成長が著しく拡大しています。当社では、細胞培養の製造工程評価の一環として、各種分析サービスをご提供しています。
事例として、間葉系幹細胞(MSC)および人工多能性幹細胞(iPS)の培養過程で使用する培養液や器具について、ICP-MS・GC/MS・FT-IR分析を行いましたので、ご紹介します。

MSCおよびiPS用培養液の微量金属元素の含有量評価 ~ICP-MS~

市販のMSCおよびiPS用培養液を、適切な前処理を施して溶液化し、ICP-MSで測定を行いました。細胞培養に影響する可能性のある9つの金属元素を測定対象とし、分析精度を確認するため、標準添加による回収率を算出しました。

分析の流れ(ICP-MS)
前処理のイメージ
前処理のイメージ

<MSCおよびiPS用培養液のICP-MS分析結果>
 培養液中の金属含有量は、1~18000ng/mLでした(各元素の定量下限値は1~10ng/mL)。
 また、標準添加による回収率は80~120%の範囲内で、ICP-MSにて精度よく評価できることを確認しました。

MSC用培養液

単位:ng/mL

  Mg Mn Fe Ni Co Cu Zn Se Mo
培養液 15000 1 47 3 17 <1 140 11 3
定量下限値 10 1 10 1 1 1 10 10 1
標準添加回収率(%) 89 80 98 116 116 107 90 100 100

※定量下限値は、試料条件により変動します

iPS用培養液

単位:ng/mL

  Mg Mn Fe Ni Co Cu Zn Se Mo
培養液 18000 1 66 2 30 4 150 <10 4
定量下限値 10 1 10 1 1 1 10 10 1
標準添加回収率(%) 89 80 89 110 110 107 86 102 102

※定量下限値は、試料条件により変動します

細胞培養工程において、培養液中の微量金属成分の変化や設備などからの予期せぬコンタミネーションを捉えることができます

MSCおよびiPS用培養液のDMSO含有量評価 ~GC/MS~

DMSOは培養細胞の凍結保存液として使用されており、培養液に残留するDMSOは、細胞毒性を示す恐れがあるため、DMSO含有量のモニターが重要です。MSCおよびiPS用培養液を適切な前処理を施して溶液化し、GC/MSで測定を行いました。

DMSO:ジメチルスルホキシド

分析の流れ(GC/MS)
DMSOのマススペクトル
DMSOのマススペクトル

<MSCおよびiPS用培養液のGC/MS分析結果>
 DMSO定量値は、MSC用培養液が3μg/mL、iPS用培養液が100μg/mLでした。
 また、標準添加による回収率は105~108%と良好で、この前処理とGC/MS測定により精度よくDMSO残留量を評価できることを確認しました。

マスクロマトグラム(m/z 63)
マスクロマトグラム(m/z 63)
項目 MSC用培養液 iPS用培養液
定量値
(μg/mL)
3 100
定量下限値
(μg/mL)
0.1
標準添加回収率
(%)
105 108

※定量下限値は、試料条件により変動します

細胞医薬品などの製品に残留するDMSO評価も対応可能です

使用器具に付着する異物評価 ~FT-IR~

培養過程で使用する器具に付着する微小異物は、培養結果に影響を与える可能性があるため、工程改善には異物の特定が重要です。ピペット内壁に付着した微量異物をマイクロマニピュレータなどを用いて採取し、FT-IR測定を行いました。

<微小異物のFT-IR分析結果>
 微量異物はポリスチレンであることが判明し、発生源はピペット上部に付いているフィルターの経年劣化によるものと推定されました。

分析の流れ(FT-IR)
赤外吸収スペクトル
赤外吸収スペクトル

培養工程で使用する器具からの溶出成分や、培養液の析出物などの同定も可能です

[ 更新日:2025/07/25 ]

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