波長分散型蛍光X線分析Wavelength Dispersive X-Ray Fluorescence Spectrometry
蛍光X線分析は、X線を試料に照射して試料原子を励起し、元素特有の蛍光X線を検出して構成元素の種類と含有率を分析する方法です。非破壊で迅速に分析でき、精度も高く、製造工程での管理分析、抜き取り分析などにも広く利用されています。
X線を試料に照射すると、試料原子の内殻の電子が励起され、原子によって定まった波長をもつ蛍光X線が発生します。
X線は分光結晶を用いて波長に応じて分離し、シンチレータなどのX線検出器で検出して、スペクトルのピーク位置と強度から試料に含まれる元素の種類と量を知ることができます。
※蛍光X線分析は、標準試料が用意できない場合でもファンダメンタルパラメータ法(FP法)による半定量分析が可能です。また、FP法を用いると窒化膜の組成分析など、化学分析で分解および測定が難しい試料の組成分析も短時間で可能です。
ファンダメンタルパラメータ法(FP法)
試料中の元素の含有率、X線発生に関する物理定数、装置に関する定数が既知の場合、発生するX線強度は理論的に計算できるので、理論強度と実測強度の相関から含有率を求める方法。
測定項目 | Al値 | Ti値 |
---|---|---|
平均値 (nm) | 0.593 | 0.893 |
標準偏差 (nm) | 0.002 | 0.003 |
変動係数 (%) | 0.42 | 0.38 |
成分 | 認証値 | 分析値 |
---|---|---|
Cu | 3.01 | 3.17 |
Ag | 0.742 | 0.684 |
Pb | 0.0262 | 0.031 |
Sb | 0.027 | - |
Bi | 0.0097 | 0.012 |
Zn | <0.001 | - |
Ni | 0.011 | 0.022 |
Fe | 0.052 | 0.081 |
As | 0.088 | 0.104 |
Cd | 0.0021 | - |
Se | 0.0025 | 0.0025 |
ソーダライムガラスは二酸化ケイ素を主成分としたガラスで、窓ガラス・自動車ガラス・びんなど広く一般的に利用されているガラスです。
主成分はSiO2,Na2O,CaOで、不純物としてAl2O3,K2O,MgOなどが含まれ、組成や不純物管理が重要です。湿式化学分析法(Siは重量法、CaおよびAlは容量法など)では熟練を要し、時間が掛かります。蛍光X線FP法では短時間で半定量分析が可能です。
蛍光X線FP法によるソーダライムガラスの半定量分析では、微量成分から主成分まで認証値とよく一致します。
成分 | 認証値 | 分析値 |
---|---|---|
SiO2 | 71.13 | 71.07 |
Na2O | 12.74 | 12.12 |
CaO | 10.71 | 11.12 |
Al2O3 | 2.76 | 2.77 |
K2O | 2.01 | 2.05 |
MgO | 0.27 | 0.25 |
SO3 | 0.13 | 0.15 |
BaO | 0.12 | 0.14 |
Fe2O3 | 0.040 | 0.053 |
As2O3 | 0.030 | 0.034 |
TiO2 | 0.014 | 0.011 |
ZrO2 | 0.007 | 0.009 |
TiNやTaNなどのバリアメタルは、配線の信頼性を向上させる目的で用いられます。これらは、組成比によってバリア性や密着性などの特性が変化するため組成比の評価が重要ですが、窒化膜の湿式分析法は分解が難しく、測定にも時間が掛かります。非破壊で分析可能な蛍光X線FP法は薄膜の測定に有効です。
下図のTiN膜の感度校正曲線で、N,Tiともに実測強度と理論強度は良好な相関が得られました。蛍光X線FP法と湿式分析の定量値は、TiN・TaN膜ともによく一致します。
NとTiの測定強度と理論強度の相関図
分析方法 | Sample A (TiN) | Sample B (TiN) | Sample C (TaN) | |||
---|---|---|---|---|---|---|
Ti | N | Ti | N | Ta | N | |
定量分析(湿式分析) | 82.5 | 17.5 | 52.3 | 47.7 | 70.0 | 30.0 |
定量分析(蛍光X線FP法) | 82.4 | 17.6 | 52.4 | 47.6 | 69.7 | 30.3 |
[ 更新日:2024/07/11 ]
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