SiC nバッファ層の窒素濃度分析Nitrogen Concentration Analysis of SiC n-Buffer Layer

SiC MOSFET構造では、特性改善のためn基板とnドリフト層の間に数百nmオーダのnバッファ層が挿入されることがあります。nバッファ層の評価では、深さ方向分解能を向上させるため、上層に位置する数μmオーダのnドリフト層を薄膜化し、その表面を平坦化する必要があります。今回当社にて、薄膜加工したSiC化合物の表面に高い平坦性をもたせる技術を開発しました。それによりSIMSを用いてnバッファ層厚・窒素(N)濃度を捉えることに成功しました。

アプローチ

右図はSiC MOSFETの断面イメージです。nバッファ層はnドリフト層と基板の間に位置し、nドリフト層厚と比較して薄膜(~100nm)、かつ低ドーパント濃度(N:窒素)という特徴を持ちます。nバッファ層厚・窒素濃度をSIMSで捉えることを目的とした場合、本構造に対して当該層で高深さ方向分解能を得るためにはnドリフト層を薄膜化する必要があります。この際、薄膜化した加工面の平坦性、ならびに加工厚の制御がnバッファ層プロファイルの深さ方向分解能を決定します。

SIMS:二次イオン質量分析 (Secondary Ion Mass Spectrometry)

SiC MOSFETの断面イメージ
ドリフト層最表面と薄膜化した加工面のAFM像

高精度研磨加工

左図はドリフト層最表面と薄膜化した加工面のAFM像です。ドリフト層表面にはもともとSiC特有の凹凸が存在していますが、 薄膜化した加工面ではその凹凸がRaで60%程度小さくなっていることがわかります。化合物に特化した薄膜加工技術を適用することで、以下の品質・精度を実現します。

  • 加工厚さを狙い±100nmで制御
  • 高い平坦性 (Ra=0.33nm) Ra:算術平均粗さ
  • テストピース(5mm角)からデバイスチップ (500μm角~)まで対応

AFM:原子間力顕微鏡 (Atomic Force Microscope)

分析事例

右図はnドリフト層の薄膜加工あり()/なし()で比較した窒素プロファイルです。加工なしプロファイルでは、測定がnバッファ層に到達した際に深さ方向分解能の低下が生じ、窒素はブロードな挙動を示しました。一方で加工ありプロファイルでは高深さ方向分解能を得て、nバッファ層と推定される階段状の窒素挙動を捉えることができました。本技術を用いると、nバッファ層のような積層体内部に位置する層の厚さ、濃度を正確に評価することが可能となります。

nドリフト層の薄膜加工あり(紫)/なし(灰)で比較した窒素プロファイル

関連技術

[ 更新日:2024/12/04 ]

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