変色した銅部材表面のXPS分析XPS Analysis for Discolored Copper metal Surface

銅は電気伝導性・熱伝導率・耐食性や加工性に優れているため、身の回りの製品から電気や電子部品などの工業製品まで幅広く活用されています。その一方で、酸化によって変色が発生しやすいのも銅の特徴です。

銅表面の変色状態評価

銅の変色の原因は、腐食物の生成による場合のほか、表面酸化膜の厚さの違い(光の干渉現象による発色)が原因となる場合もあるので、X線光電子分光(XPS)による最表面の定性分析に加えて深さ方向分析も実施すると有効です。 事例では、銅部材の表面定性分析と深さ方向分析を実施し、変色部分と正常部分の比較を行いました。

XPS : X-ray Photoelectron Spectroscopy (X線光電子分光)

XPS定性分析(Cu 2p3/2, Cu LMMオージェ)
XPS定性分析(Cu 2p3/2, Cu LMMオージェ)

※CTサテライト:
電荷移動サテライトと呼ばれ、CuとOが結合していることに起因するサテライト構造です。光電子が放出される過程で、O 2p軌道からCu 3d軌道へ電子の移動が起こり、XPSではこの過程をサテライト構造として検出することができます。

結果1

Cu 2p3/2, Cu LMMオージェ測定から部材最表面にはCuO, Cu(OH)2,Cu2Oなどが存在すると考えられます。正常部分のCu LMMオージェスペクトルにおいてCu metal成分が観測されていることから、表面酸化膜の膜厚は数nm程度と推測されます。

深さ方向分析

表面定性分析に続き、深さ方向分析を実施し、銅部材の変色原因を調査しました。

XPS深さ方向プロファイル
XPS深さ方向プロファイル






変色部分について、各深さでの銅の状態を調べるため、深さ方向プロファイル(右上図)の矢印↓で示したのそれぞれの深さでCu 2p3/2スペクトルを比較しました。

ではCTサテライトの位置が若干ずれていることが分かります。

ではCTサテライトはほとんど見えていません。

各深さでのCu 2p3/2スペクトル

結果2

正常部分については、深さ方向分析からも表面酸化膜は非常に薄いことが確認できました。変色部分については、100nm以上(SiO2換算)の酸化膜が存在することが分かります。 加えて、この酸化膜は2層存在することが深さ方向プロファイルからは分かります。 CTサテライトの位置から判断すると、最表面層にはCuO成分が多く、表面第2層にはCu2Oが多く存在すると推測されます。 以上の結果より、正常部と変色部では、表面酸化膜の厚みに大きな差がみられ、変色は厚い2種類の酸化膜が原因となっている可能性が示唆されました。

結果1、2から、銅など金属部材の変色部分の原因調査では、最表面状態の定性分析と表面酸化膜の厚さや深さ方向の分布などXPSによる評価が非常に有効です。

[ 更新日:2024/02/26 ]

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