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医薬品分析サービス 1 目 次 Cryo-FIBを用いたOD錠の断面SEM観察 LC/MSによるリポソームの組成分析 SAXSによるDDS製剤高分子ミセルの粒子評価 錠剤内部の3次元X線顕微鏡観察 ソフトカプセルのできばえを可視化 顆粒剤コーティング層の観察 錠剤内部の非破壊観察 錠剤崩壊性のリアルタイムX線透過観察 崩壊遅延するOD錠の内部状態観察 錠剤内部の密度分布 3次元X線顕微鏡によるカプセル内部の塩粒子の粒度分布測定 錠剤構成成分の分布 錠剤断面における薬剤成分の分布評価 医薬品製剤中の元素不純物分析 医薬品製剤中の不純物分析 (XRF) 錠剤混入異物の分析 XPS分析の錠剤への応用 粒子封じ込め (コンテインメント) 性能評価 粒子封じ込め性能評価のサンプリング技術 封じ込め性能評価の高感度測定技術 薬塵測定による交叉汚染・産業衛生リスク管理 賦形剤測定による原薬気中濃度の推定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P5 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P6 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P7 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P8 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P9 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P10 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P11 ・・・・・・・・・・・・・ P12 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P13 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P14 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P15 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P16 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P17 ~ P18 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P19 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P20 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P21 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P22 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P23 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P24 略語 CT EDS FIB FT-IR ICP-MS ICP-OES LC/MS LC/MS/MS Raman SAXS SEM TOF-SIMS WDS XPS XRF : 手法・装置名 : Computed Tomography (コンピュータ断層撮影) : Energy Dispersive X-ray Spectroscopy (エネルギー分散型X線分光 ) : Focused Ion Beam (集束イオンビーム) : Fourier Transform - Infrared Spectroscopy (フーリエ変換赤外分光) : Inductively Coupled Plasma - Mass Spectrometry (誘導結合プラズマ質量分析) : Inductively Coupled Plasma - Optical Emission Spectrometry (誘導結合プラズマ発光分光分析) : Liquid Chromatography / Mass Spectrometry (液体クロマトグラフィー質量分析) : Liquid Chromatography / Tandem Mass Spectrometry (液体クロマトグラフィータンデム質量分析) : Raman Spectroscopy (ラマン散乱分光) : Small Angle X-ray Scattering (X線小角散乱法) : Scanning Electron Microscope (走査電子顕微鏡) : Time of Flight –Secondary Ion Mass Spectrometry (飛行時間型二次イオン質量分析) : Wavelength Dispersive X-ray Spectroscopy (波長分散型X線分光) : X-ray Photoelectron Spectroscopy (X線光電子分光) : X-ray Fluorescence Spectrometry (蛍光X線分析)

医薬品分析サービス 2 Cryo-FIBを用いたOD錠の断面SEM観察 Cross Sections of OD Tablets Observed by Cryo-FIB-SEM 当社所有のプラズマFIBの特徴 OD錠1)の構造と崩壊メカニズムに関する調査の一環として、今回、水を滴下したOD錠 (崩壊剤含有)の断面を観察することに成功しました。 当社が所有するプラズマFIB(Xeビーム加工)では、断面作製時に試料への熱ダメージを抑えて 加工することができ、また従来のFIB(Gaビーム加工)より広範囲・短時間での加工も可能です。 • Cryo条件下(冷却状態)での断面加工ができ、試料に与える熱ダメージを抑えることが可能 • 高周波誘導プラズマイオン源(Xe)をイオンソースに用いることで、従来のFIB(Ga)より広範囲・高速な加工が可能 • Xeは反応性が低いため、試料を構造変化させにくい 水を滴下したOD錠の断面SEM観察 水(0.05ml)を滴下した崩壊剤含有OD錠を冷却状態で断面加工し、SEM観察を行いました。 での加工では 熱ダメージ(焦げ)が見られません 水滴下領域 断面加工位置 (1) 中央部 (1)中央部 加工・観察イメージ OD錠真上(青矢印)から Xeイオンビームで斜線部を削って断面加工を行い 作製した加工面(赤線部)を 斜め(橙矢印)よりSEM観察しています ※OD錠を真横から見た模式図です 加工 断面 水を滴下した崩壊剤含有OD錠 *黒い四角:加工によって開いた穴 水の影響あり 水の影響なし 水滴下領域における断面SEM像 (2)境界部 断面SEM像(中央部) 断面SEM像(境界部) 崩壊剤あり 崩壊剤なし 崩壊剤あり 比較 崩壊剤を含まないOD錠の断面SEM像 (水滴下後) 境界 冷却状態 冷却状態で加工しなかった時の 熱ダメージ(焦げ) ※各SEM像で縦方向に見られる細かい線は加工起因(カーテニング効果)によるものです。 空隙あり 空隙 あり (2) 境界部 100μm 100μm 100μm 1) OD錠(Orally Disintegrating Tablets:口腔内崩壊錠) • 崩壊剤を含むOD錠では、水を滴下 した領域で細かな空隙が増え、 OD錠に崩壊が起きていることが 分かります。 • 崩壊剤を含まないOD錠では、水を 滴下しても、空隙の増加は見ら れませんでした。 FIB加工時間(同一面積での比較) • 従来FIB : 40時間以上/箇所 • プラズマFIB: 約2時間/箇所 試料ご提供元:昭和大学大学院 薬学研究科 薬剤学分野原田努先生 (科研費基盤研究C) 24-028(1)

医薬品分析サービス 3 LC/MSによるリポソームの組成分析 Composition Analysis of Liposome by LC/MS 評価に用いたリポソーム リポソーム構成成分の組成 製剤の品質管理として、リポソームの脂質組成や不純物成分の把握が求められています。 今回、リポソームにおける構成成分の組成および保管期間による経時変化を把握することを 目的として、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)にて測定した事例をご紹介します。 ◆BPI(Base Peak Ion)クロマトグラム DSPC 0.5μg/mL相当 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 100 0 % 3.81 PSPC 0.5μg/mL相当 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 100 0 % 3.69 DSPE-PEG2000 1μg/mL相当 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 100 0 % 3.36 CH 10μg/mL相当 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 100 0 % 3.15 O O O O O O O ON+ P O O O O O O O ON+ P O O O O O O O O- NH P O O On HO ◆定量結果(mol%) リポソーム構成成分の組成が 明らかになりました 各成分の分離に成功 リポソームの経時変化 ◆BPIクロマトグラムとフラグメント解析による推定構造式 経時変化により、CHが消失し、酸化体が生成していることが分かりました 当社ではリポソーム製剤の品質管理におけるLC/MSの活用に取り組んでいます 125 mM (NH4)2SO4aq. 125 mM (NH4)2SO4aq. 調製後 リポソーム構成成分 • リン脂質:HSPC (DSPC+PSPC)1) • PEG修飾剤:DSPE-PEG20002) • コレステロール(CH)3) 試料ご提供元:千葉大学大学院薬学研究院製剤工学研究室東先生 min min min min リポソーム 約1年経過後 リポソーム 調製直後 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 % % 3.18 2.48 HO HO O 推定構造式 ※酸素の結合位置は一例 保管 経時変化による CHの変質を確認! 不純物成分 min min 24-032(1) 1) hydrogenated soybean phosphatidylcholine 1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine 1-Palmitoyl-2-stearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine 2) 1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine- N-[methoxy(polyethylene glycol)-2000 3) Cholesterol 0 20 40 60 80 100 120 37.1 40.0 40 62.9 60.0 60 7.3 6.6 5 含有量(mol%) CH HSPC(DSPC+PSPC) DSPE-PEG2000 調整1回目 調整2回目 理論値

医薬品分析サービス 4 22-048(1) SAXSによるDDS製剤高分子ミセルの粒子評価 Particle Analyses of DDS Polymeric Micelles using SAXS DDS(ドラッグデリバリーシステム)1)とは、体内の必要箇所に対して選択的に薬剤を作用させる 薬物輸送システムのことで、副作用を抑えることから大きな期待が寄せられています。 DDSでは 高分子ミセルを用いることがあり、当社ではSAXS(X線小角散乱法)により高分子ミセルの 粒子形状・サイズ分布の評価を行います。 1) DDS :Drug Delivery System (ドラッグデリバリーシステム) 特徴 SAXS:X線の散乱を用いて物質の構造を解析する分析手法 • 対象試料:固体でも液体でも可能 • 非破壊で分析可能 • ナノ粒子の形状(球や楕円など)およびサイズ分布の算出が可能 水溶液中の高分子ミセルのイメージ 高分子鎖 親水性疎水性 薬物 DDS製剤の解析事例 水溶液中の高分子ミセルをSAXS分析しました。 得られた散乱データに対して球状模型でのシミュレーション解析を行い粒子径と粒径分布を評価しました。 モデルパラメータ • 形状〔例:球半径(r)〕 • サイズ分布標準偏差(σ) • 球散乱長密度 • 溶液散乱長密度 SAXSプロファイル 1.E-05 1.E-04 1.E-03 1.E-02 1.E-01 1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04 1.E-02 1.E-01 1.E+00 Intensity (a.u.) q (nm-1) 測定結果 最適解 シミュレーション解析結果 最適解から算出した値 r = 23 nm , σ= 0.16 ※粒子分布は対数正規分布として実施 試料ご提供元:千葉大学大学院薬学研究院製剤工学研究室 東先生 DDS製剤高分子ミセルの粒子形状・粒径分布について、非破壊で算出ができました ※SAXS測定は、外部放射光施設を利用するため、利用手続きから測定までにある程度の時間をいただきます。

医薬品分析サービス 5 錠剤内部の3次元X線顕微鏡観察 3D Observation of Internal Structure of Tablet by 3D X-ray Microscopy 錠剤には、適切な部位で適量が作用するように、内部成分の割合には重要な意味があります。 3次元X線顕微鏡(X線CT)により、内部状態を3次元的に可視化することで紛薬などの分布状態を 確認できます。 3次元X線顕微鏡(X線CT) • 3次元X線顕微鏡は、対象物の内部を非破壊で3次元観察することが可能です。 • 試料を透過したX線を光に変換して光学レンズで拡大するため、高分解能・高コントラストの観察が可能です。 3次元X線顕微鏡の基本構造 X線透過 光学ズーム 試料 X線源 シンチレータ 光学レンズ 検出器 CT 構築 装置内部 ←試料台 X線源 検出器 ←試料台 光学レンズ 事例 模擬錠剤内部の観察 外観写真 10mm 5mm 試料 模擬錠剤の内部成分 混合比 (重量%) 乳糖+ コーンスターチ ステアリン酸 マグネシウム 酸化鉄 (模擬原薬) 1 92 3 5 2 96 3 1 酸化鉄を含む内部粒子を 3次元的に画像化できます 試料1 X線CT 3次元像 酸化鉄 混合比5% 試料2 X線CT 3次元像 酸化鉄 混合比1% 試料1 X線CT 断面像 酸化鉄 混合比5% 1mm 試料2 X線CT 断面像 酸化鉄 混合比1% 1mm 16-074(4)

医薬品分析サービス 6 ソフトカプセルのできばえを可視化 Visualization of Soft-Capsule Product Quality ソフトカプセルの3次元観察 被覆の厚みを可視化 ソフトカプセルの内用液が漏れ出す不具合の原因の一つとして、皮膜の厚みの不均一が 考えられます。 3次元X線顕微鏡(X線CT)では、カプセル全体の皮膜を3次元で観察することが でき、またデータ処理を行うことによって、皮膜の厚みに対応するカラー表示も可能です。 このような可視化によって、カプセルのできばえを評価することができます。 X線CT 3次元像 (ソフトカプセル全体) X線CT 平面像 皮膜の厚みをカラー表示 (平面カット) 皮膜の厚みをカラー表示 (断面カット) 89.5μm 皮膜 2mm 皮膜接合部に薄い箇所 赤色箇所:150μm以下 0 150 300 500 厚み(μm) 0 150 300 500 厚み(μm) 24-017

医薬品分析サービス 7 顆粒剤コーティング層の観察 Observation of a Coating Layer on Pharmaceutical Particles 医薬品で用いられる顆粒剤には、苦味やにおいを抑えて服用しやすくしたり、薬が溶ける時間を 調整するために表面にコーティングを施しているものがあります。 非破壊での3次元構造観察や 断面加工での詳細観察を行うことで、コーティング層の状態を確認することができます。 非破壊での3次元構造観察 (3次元X線顕微鏡) 加工が難しい材料でも、非破壊で内部構造を観察することができます。 また、3次元の情報が得られるため、所望の箇所の断面構造を確認することができます。 3軸スライス像 Z軸スライス像 200μm 100μm コーティング層 核粒子 34μm 断面構造解析(断面加工+観察+元素分析) イオンミリングを用いることで、顆粒やコーティングなどの軟らかい材料でも、低ダメージでの断面加工を行う ことができます。 解析フロー イオンミリング 断面加工 SEM観察 EDS/WDS分析 SEM像 10μm コーティング層 核粒子 EDSによる元素分析カラーマッピング像 C 10μm O 10μm Si 10μm 観察試料名:乾式コーティング粒子 ※試料ご提供元:大川原製作所 様 19-079(1)

医薬品分析サービス 8 錠剤内部の非破壊観察 Non-Destructively Observing the Insides of Tablets 錠剤には、服用しやすさ、取り扱いの容易さ、においや苦味の抑制などの利便性と、適切な 部位で適量が作用するように、溶ける箇所・時間などを調整する重要な機能があります。 3次元X線顕微鏡(X線CT)は、コーティング層、粉薬の分布状態などの内部構造を確認でき、 非破壊であるため、乾燥・湿潤などによる状態変化の確認にも活用できます。 市販薬内部の観察 錠剤全体のCT像 2mm 錠剤のCT像(拡大) 500μm コーティング層 362μm 錠剤のCT像(拡大) 200μm 粉薬(白色部) 亀裂(黒色部) 幅4μm カプレット錠内部の空隙率の算出 3次元X線顕微鏡でカプレット錠内部の空隙を可視化 空隙 カプレット錠断面のCT像 空隙はX線吸収率が小さく 暗く表示される 内部空隙 0.14 mm3 0.04 % 18-057(2)

医薬品分析サービス 9 22-049(2) 錠剤崩壊性のリアルタイムX線透過観察 Observation of Disintegration of a Tablet using Real-Time X-ray Radiography 口腔内崩壊錠は、少量の水で崩壊することが望まれます。 そのような性質を持つ錠剤の 設計や作製のためには、吸水崩壊のメカニズム解明が重要です。 放射光施設の高輝度X線を 用いることで、錠剤の吸水と崩壊過程をリアルタイムでX線透過観察することができます。 リアルタイムX線透過観察 観察イメージ 試料台 水滴 口腔内崩壊錠 X線 カメラ リアルタイムX線透過像 0s 水滴滴下前 1mm 2s 水滴滴下 1mm 4s 水滴が広がり徐々に吸水 1mm 182s 錠剤内部の一部崩壊 1mm 高輝度X線により、錠剤の吸水と崩壊開始の状態を リアルタイムに観察でき、動画でのご提供も可能です。 経過時間ごとの色分け表示 1mm 2秒後 4秒後 182秒後 混色の様子 (光の三原色) ※リアルタイムX線透過観察は、外部放射光施設を利用するため、利用手続きから測定までにある程度の時間をいただきます。

医薬品分析サービス 10 崩壊遅延するOD錠の内部状態観察 Observation of Internal States of OD Tablets with Delayed Disintegration 原理 結果 OD錠1)は口腔内で速やかに崩壊しなければなりません。 設計どおりに崩壊しない場合には、 OD錠内部の状態を把握することも望まれます。 3次元X線顕微鏡(X線CT)は内部構造を非破壊で観察できるツールであり、苛酷試験前後の OD錠の内部構造の変化を捉えることで、顧客工程改善の一助となった事例をご紹介します。 1) OD錠(Orally Disintegrating Tablets:口腔内崩壊錠) X線CTは非破壊で試料内部のX線吸収率の空間的な分布を可視化する手法です。 試料内部が変化すると、 試料内部のX線吸収率分布に変化が起こる場合があります。 それを定量化することで、試料内部でどのような 変化が起きたかを推測することが可能です。 一定の大きさの領域内でのX線吸収率のヒストグラムの形状を表す 値「歪度」は、試料内部の状態を表す有用な量の一つです。 苛酷試験 崩壊遅延するOD錠 安定なOD錠 試験前 試験後 歪度 歪度 歪度 歪度 崩壊遅延 0.5 1 1.5 0.5 1 1.5 0.5 1 1.5 0.5 1 1.5 試料 3次元X線吸収率データ 複数の領域内の 吸収率分布の歪度の3次元分布 X線CT観察 データ解析 データの取得と解析の流れ X線吸収率分布の歪度の3次元分布 2mm 2mm 2mm 2mm 2mm 2mm 2mm 2mm OD錠と仮想断面の位置関係 OD錠内部の経時変化の影響で崩壊時間が長くなっていることが 判明。 原因がビジュアル的に明らかとなり、顧客での改善に向けた 検討方針策定に寄与しました。 23-013

医薬品分析サービス 11 錠剤内部の密度分布 Density Distributions Inside Tablets 打錠条件により、錠剤内部に空隙が残る場合や密度分布が変化する場合があります。 3次元X線顕微鏡(X線CT)は、非破壊かつ3次元での観察により、空隙分布や密度変化の数値化 が可能で、打錠条件の改善に役立てることができます。 錠剤のX線CT観察 三角錠のX線CT結果の3次元表示 1mm 錠剤の密度分布とX線CT像の輝度の関係 固体 空 隙 固体 空 隙 各領域内の輝度のヒストグラムを作成 空隙率が小さい 空隙率が大きい 度数 輝度 空隙 固体 空気のX線吸収率はほぼゼロで輝度は小さくなります。 そのため、各領域内の固体の占める割合により輝度の ヒストグラムの歪み方が異なることから、これを歪度として 数値化することができます。 空隙率が大きいほうが歪度が 小さくなります。 X線CT像の1断面 左図への歪度像の重ね合わせ 歪度が大きい場所を明るく、歪度が小さい場所を暗く 表示しています。 中心部で歪度が小さいため、中心部は 空隙率が大きく、低密度であることが示唆されます。 ※試料ご提供元:株式会社畑鐵工所 様 19-111

医薬品分析サービス 12 3次元X線顕微鏡によるカプセル内部の塩粒子の粒度分布測定 Evaluation of Salt Particle Size Distribution in Capsule by 3D X-ray Microscopy カプセル内に含まれる粒子の大きさは薬の効果と密接な関係があると言われ、粒度分布を 得ることが求められます。 3次元X線顕微鏡(X線CT)では、対象物内部のX線吸収率の違いを 3次元で可視化することにより、非破壊で内部物質の粒度分布を調べることができます。 事例 塩 (塩化ナトリウム) を封入したカプセルの内部観察 カプセルの大きさ 塩粒子を含むカプセル のX線CT像から個々の 塩粒子を識別し、粒子 の大きさ・表面積などを 統計的に解析することが 可能です。 X線CT像 X線CT像の塩粒子を識別 塩粒子の分離識別 塩粒子の体積で色分け 0.012~0.10 mm3 0.10~0.20 mm3 0.20~0.30 mm3 0.30 mm3~ 測定結果から得られる値 平均 標準偏差 塩粒子の体積 0.17 mm3 0.090 mm3 塩粒子の表面積 1.9 mm2 0.66 mm2 塩粒子の直径1) 0.67 mm 0.12 mm 0 20 40 60 80 100 120 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 頻度 塩粒子の体積 (mm3) ヒストグラム 測定値 理論曲線 0 50 100 150 0 1 2 3 4 頻度 塩粒子の表面積 (mm2) ヒストグラム 測定値 理論曲線 0 20 40 60 80 0.3 0.5 0.7 0.9 頻度 塩粒子の直径 (mm)1) ヒストグラム 測定値 理論曲線 ヒストグラム中の理論曲線は対数正規分布を表しており、今回使用した塩粒子の体積・表面積・直径の分布は どちらも対数正規分布とよく一致する結果が得られました。 1) 粒子を球と仮定し、粒子の体積から直径を計算 16-071(3)

医薬品分析サービス 13 錠剤構成成分の分布 Analysis of Components Distribution in Tablet 錠剤を構成する薬効成分・賦形剤・滑沢剤・その他添加剤などの分布・分散状態を把握する ことは、錠剤の設計および品質管理のうえで重要です。 構成成分の分布をTOF-SIMSで、成分の 同定をラマン散乱分光で行なった事例をご紹介します。 X線CT観察 3次元X線顕微鏡 (X線CT) 像 100μm X線CT像では、薬剤の粒子 形状と空気空間は確認でき ますが、錠剤構成成分の同定 はできません。 TOF-SIMSによる構成成分の分布 TOF-SIMS分析 100μm 錠剤構成成分分布の重ね合わせ像 ●アセトアミノフェン ●マンニトール ●ステアリン酸マグネシウム アセトアミノフェン 由来(C3H8N+) マンニトール (C6H15O6 +) ステアリン酸 マグネシウム由来 (Mg) 賦形剤副成分A 賦形剤副成分B 賦形剤副成分C アセトアミノフェン(薬効成分)、マンニトール(賦形剤)、 ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)の粒径と分布を確認できました。 また、それ以外に3種の異なる成分の分布を確認できました。 ラマン散乱分光による構成成分の同定 Intensity (counts) Raman shift (cm-1) 400 600 800 1000 1200 1400 1600 アセトアミノフェンの ラマンスペクトル 錠剤の薬効成分部分の ラマンスペクトル アセトアミノフェンの分布 (TOF-SIMSと同一視野ではありません) X (μm) -200 0 200 錠剤の薬効成分部分を、同定能力の高いラマン散乱分光で確認した ところ、アセトアミノフェンのスペクトルと一致しました。 本手法は成分同定や結晶多形の分布を確認するのに適しています。 ※試料ご提供元:大阪ライフサイエンスラボ 様、株式会社畑鐵工所 様 17-084(2)

医薬品分析サービス 14 錠剤断面における薬剤成分の分布評価 Distribution Evaluation of the Drug Ingredient in the Tablet Cross-Section 脆い錠剤1)の薬剤成分の断面分布を、SEMによる構造観察とEDS元素分析、TOF-SIMSによる 成分分析により確認した事例をご紹介します。 1) 市販の医薬品を分析 断面SEM観察・EDS元素分布 断面加工(水を使用しないイオンミリング加工)した錠剤について、SEM観察による内部構造、EDSマッピング による元素分布(分散状態など)を確認できます。 錠剤断面 コーティング層 コーティング層との 境界を拡大 錠剤の内部を拡大 二次電子像 100μm コーティング層 250μm 反射電子像 100μm コーティング層 250μm EDS元素マッピング像 100μm コーティング層 250μm C P Ti S 錠剤内部のTOF-SIMSによる化合物の分散状態評価 断面加工(ミクロトーム加工)した錠剤について、TOF-SIMSにより、コーティング層や内部の化合物の分散状態 を確認できます。 錠剤断面像とイオンイメージ像 500μm 錠剤コーティング層の化合物の分散状態 糖系成分 ・・・・・・コーティング剤 ステアリン酸 ・・・潤滑剤 リン酸 ・・・・・・・・電解質 錠剤内部のイオンイメージ像 200μm 錠剤内部の化合物の分散状態 化合物 ・・・・・・・薬効成分 ステアリン酸 ・・・潤滑剤 リン酸 ・・・・・・・・電解質 14-054(6)

医薬品分析サービス 15 医薬品製剤中の元素不純物分析 Analysis of Elemental Impurities in Pharmaceutical Formulation 試料分解から測定の流れ 製薬不純物分析は、第18改正日本薬局方(2021年6月)に伴い、原則として一般試験法の 元素不純物に関わる規定にしたがって適切に管理を行うことになりました。 当社ではICH Q3Dガイドライン対象の元素や対象外の元素の不純物分析が可能です。 試料はかりとり マイクロウェーブなどで 酸分解 完全分解 測定 ICP-MS,ICP-OES 経口製剤の分析結果例 分析結果例 元素 クラス 許容濃度 限度値 (μg/g) 分析値 (μg/g) 定量限界 【QL】 (μg/g) 10% 添加 100% 添加 120% 添加 添加回収率(%) Cd 1 2.5 < QL 0.002 99 102 101 Pb 2.5 < QL 0.012 98 102 105 As 7.5 < QL 0.019 99 98 105 Hg 15 < QL 0.12 95 101 101 Co 2A 25 < QL 0.028 94 100 102 V 50 < QL 0.019 93 97 102 Ni 100 < QL 0.023 105 102 99 許容濃度限度値(μg/g)は、オプション2aにて算出しています。 1日の最大摂取量を2gとしています。 R² = 0.99997 0 0.00 0.10 0.20 0.30 Pb 濃度ppb 強度比 R² = 0.99999 0 0.00 0.05 0.10 0.15 Cd 強度比 濃度ppb 簡易バリデーションも可能です ICH Q3Dガイドライン対象外の元素も分析可能です H He Li Be B C N O F Ne Na Mg Al Si P S Cl Ar K Ca Sc Ti V CrMnFeCo Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr Rb Sr Y Zr NbMoTc RuRhPd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe Cs Ba (1) Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn Fr Ra (2) (1) La Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu (2) Ac Th Pa U Np Pu AmCm Bk Cf Es Fm Md No Lr 分析可 ※白字はICH Q3Dガイドライン対象外の元素 (1) ランタノイド (2) アクチノイド *測定にはICP-MSまたはICP-OESを 用います *分解条件によっては測定ができない 元素もあります 24-037

医薬品分析サービス 16 医薬品製剤中の不純物分析 (XRF) Analysis of Impurities in Pharmaceutical Formulation (XRF) 試料分解から測定の流れ 蛍光X線分析結果 医薬品や原料およびその製造過程における元素不純物分析は、リスクアセスメントの観点から 非常に重要です。 当社では、ICP-MSやICP-OESによる元素不純物分析に加え、試料調製が簡便な蛍光X線分析 (XRF)を実施しています。 医薬品の元素不純物ガイドライン(ICHQ3D) では、経口製剤に対し、不純物元素の 許容一日暴露量(PDE)が設定されています。 右の表に示すように、XRFの定量下限値は、 経口製剤におけるクラス1,2Aの許容濃度 限度値以下となり、定量評価が可能である ことが分かりました。 XRF測定 スペクトル例 (意図的に添加した標準・ブランクの比較です) 表面 内部 (断面) 全体 (粉砕後) Hg:5.3ppm Pb:22ppm As:6.4ppm ブランク Cs:8ppm ブランク (cps/mA) (cps/mA) 7 6 5 4 3 2 1 0.18 0.16 0.14 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00 Pb-LαAs-Kα Hg-Lα Br-Kα Pb-Lβ1 Cd-Kα 10 11 12 20 0 0 X線強度 X線強度 エネルギー エネルギー 定量下限値 錠剤の分析結果例 測定箇所 クラス1(μg/g) ICH Q3Dガイドライン対象外の元素(mass%) Cd Pb As Hg Ti Si MgCaFeZn K Al P 表面 <1.3 <0.8 <0.4 <1.0 5.8 2.6 1.9 0.44 0.27 0.24 0.23 0.07 0.03 内部 <1.3 <0.8 <0.4 <1.0 0.03 0.55 4.0 2.9 0.48 0.29 1.4 0.04 1.6 全体 <1.3 <0.8 <0.4 <1.0 0.07 0.04 3.5 3.3 0.46 0.28 1.2 0.04 1.8 ICH Q3Dガイドライン対象外の元素も分析可能です 元素 クラス PDE (μg/day) 許容濃度 限度値 (μg/g) XRFによる 定量下限値 (μg/g) Cd 1 5 2.5 1.3 Pb 5 2.5 0.8 As 15 7.5 0.4 Hg 30 15 1.0 Co 2A 50 25 1.7 V 100 50 1.7 Ni 200 100 1.1 PDE:Permitted Daily Exposure 各元素のPDE値・許容濃度限度値・XRFの定量下限値例 許容濃度限度値(μg/g)は、オプション2aにて算出しています。 1日の最大摂取量を2gとしています。 24-038

医薬品分析サービス 17 錠剤混入異物の分析 Analysis of Foreign Particles mixed in Tablets 製造工程・環境から医薬品錠剤に混入する異物は、大きな問題です。 当社では、異物の形状や 状態から適切な分析手法を選択・ご提案し、発生源の究明や問題解決のサポートをいたします。 工程使用部材片の混入 錠剤内部に灰色の異物が埋没しています。 異物を錠剤内から採取すると弾性を有しており、樹脂材が疑われ ました。そこでフーリエ変換赤外分光(FT-IR)分析を実施しました。 光学顕微鏡像 500μm 赤外吸収スペクトル Absorbance Wavenumber/cm-1 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 錠剤混入異物の 赤外吸収スペクトル ライブラリ検索結果 シリコーン樹脂 C-H伸縮振動 Si-C伸縮振動 Si-O伸縮振動 Si-C伸縮振動 スペクトルが一致 ライブラリ検索の結果、異物はシリコーン樹脂でした。 工程で使用しているシリコーンゴム栓の破片混入と 判明し、部材選定を見直し、改善に繋がりました。 環境起因の汚染物混入 1 錠剤内部に毛様の異物が埋没しています。 異物を錠剤内から採取し、FT-IR分析を実施しました。 光学顕微鏡像 500μm 赤外吸収スペクトル Absorbance Wavenumber/cm-1 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 錠剤混入異物の 赤外吸収スペクトル ライブラリ検索結果 ポリアミド N-H伸縮振動 C-H伸縮振動 C=O伸縮振動 N-H変角振動 スペクトルが一致 ライブラリ検索の結果、異物はポリアミドでした。 人毛・獣毛の混入と判明し、製造環境を見直し、改善できました。 22-035

医薬品分析サービス 18 環境起因の汚染物混入 2 錠剤内部に赤褐色の異物が埋没しています。 異物中の特異元素を調べるため、蛍光X線分析(XRF)を用いた 元素マッピングを実施しました。 錠剤の全体像 1mm マッピング範囲 XRFマッピング像 Fe 異物部のXRFスペクトル X線強度 (cps) Energy (keV) 0 10 Fe Fe 200 400 600 800 1 000 1 200 1 400 1 600 異物埋没箇所とFeの分布が一致し、異物は鉄を含む成分と判明しました。 更に、異物がどんな化合物か特定するため、異物部のラマン散乱分光分析を実施しました。 Intensity 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 Raman Shift (cm-1) ラマンスペクトル 錠剤混入異物の ラマンスペクトル ライブラリ検索結果 酸化鉄(Fe2O3) A1g Eg スペクトルが一致 ライブラリ検索の結果、異物は 酸化鉄でした。 環境起因の鉄錆混入 と判明し、製造環境を見直し、改善 に繋がりました。 各分析手法の特徴の比較 分析手法 検出可能な 異物サイズ 有機物の 同定能力 無機物の 同定能力 特徴 XRF △ (10μm程度) × ○ 元素の特定が可能 非破壊測定が可能 FT-IR ○ (5μm程度) ◎ △ 化合物の特定が可能 特に有機物の同定能力が高い ラマン散乱分光 ◎ (1μm程度) ○ ○ 化合物の特定が可能 ガラス越しの測定も可能 22-035

医薬品分析サービス 19 XPS分析の錠剤への応用 XPS Analysis for Tablets X線光電子分光(XPS)は、X線を試料に照射した際に放出される電子を観測し、試料内に存在 した電子の情報を取り出す分析手法で、極表面の化学組成・結合状態・価数などの情報を 得ることができます。 原理 固体表面にX線を照射すると、試料中の原子の 各軌道から電子(光電子)が放出されます。 XPSは、 この光電子の運動エネルギーと光電子強度を測定し、 元々試料中にいた電子の状態を調べる分析手法です。 放出された光電子の運動エネルギーは各軌道の 束縛エネルギーに対応し、元素・化学状態に特有です。 そのため、光電子のエネルギーおよび強度を測定する ことにより、原子の同定・定量が可能となります。 光電子放出イメージ 特徴 • 数nmの最表面の組成分析(Li~)が可能 • 感度は、0.1atomic%程度 • 電子状態分析(化学結合・価数・ギャップなど)が可能 • 絶縁物・有機物の測定が可能(非破壊分析) • 測定領域は、数十~数百μmφ XPS分析の錠剤への応用事例 成分の混ざり具合が異なる錠剤をXPS分析し、比較しました。 全定性分析結果 C / S 0 1 2 3 4 5 6 7 8 ×104 Binding Energy (eV) 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 デモ錠剤A デモ錠剤B - C KLL - O KLL - O 1s - N 1s - C 1s - Si 2s - Si 2p - O 2s XPSスペクトル C1s C / S 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 Binding Energy (eV) 298 296 294 292 290 288 286 284 282 280 278 デモ錠剤A デモ錠剤B 芳香族由来 π-π* satellite O=C-O, C-N C-O C-C/H N1s C / S 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 Binding Energy (eV) 410 408 406 404 402 400 398 396 394 392 390 デモ錠剤A デモ錠剤B 芳香族由来 π-π* satellite N N N O1s C / S 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 Binding Energy (eV) 542 540 538 536 534 532 530 528 526 524 522 デモ錠剤A デモ錠剤B O-Si, O-C O=C Si2p C / S 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 Binding Energy (eV) 112 110 108 106 104 102 100 98 96 94 92 デモ錠剤A デモ錠剤B Si-O Si-C デモ錠剤Aとデモ錠剤Bの間において、Si2pおよびC1s XPSスペクトルに違いが観測されました。 これら スペクトル形状の違いは、錠剤の構成成分の構造や混合比の違いを反映しているものと推定されます。 21-100(2)

医薬品分析サービス 20 粒子封じ込め (コンテインメント) 性能評価 Assessing the Particulate Containment Performance of Pharmaceutical Equipment 製薬の品質リスクマネジメントは、患者保護を目的としたクロスコンタミネーション(交叉汚染) 対策、作業者の曝露対策がポイントであり、特に高生理活性医薬品(抗がん剤など)の取り扱い において粒子封じ込め性能評価が必要です。 評価の対象とサンプリング方法 ≪一次封じ込め≫ :設備 • アイソレーター • フレキシブルアイソレーター • ドラフトチャンバー • 秤量ブース など ≪二次封じ込め≫ :作業エリア区分 • 作業空間 気中濃度 エアサンプリング 浮遊する粒子状物質をサンプラーで吸引捕集 IOM サンプラー 個人曝露 サンプリング 定置 サンプリング IOM (The Institute of Occupational Medicine) サンプラ:ISO7708吸引性粉塵測定用 • 設備本体および周辺 • 設備から取り出した器具 • ハザードエリア内外 • 作業空間からの持出物品 表面汚染 スワブサンプリング 粉体取扱作業器具などの表面汚染を拭き取り捕集 拭き取り用 フィルター 設備表面の 拭き取り 汚染拭き取り 範囲 SMEPAC (第2版) 推奨代替試料の特徴と当社定量下限 代替試料名1) 当社 定量下限 (/試料) SMEPAC推奨 定量下限 (/試料) 特徴 ラクトース 1ng2) 3ng3) 賦形剤成分 取り扱いが容易 スクロース 0.2ng マンニトール 0.4ng ナプロキセンナトリウム 0.1ng API原料 発塵性が高い アセトアミノフェン 0.4ng リボフラビン (ビタミンB2) 0.2ng 蛍光性を有する 1) 上記以外の原薬を用いた評価については、別途ご相談ください。 2) 測定試料の種類によっては下限2ngとなる場合があります。 3) 推奨定量下限:CPT 1μg/m3、15分間サンプリングの場合にCPTの10%を定量化できることから算出 = (1μg/m3×0.1×1000ng/μg×2L/分×15分)/(1000L/m3) = 3ng/試料 CPT API : Containment Performance Target (封じ込め性能目標) : Active Pharmaceutical Ingredient (医薬品有効成分) 22-065

医薬品分析サービス 21 粒子封じ込め性能評価のサンプリング技術 Sampling Technique for Assessing the Particulate Containment Performance of Pharmaceutical Equipment 粒子封じ込め性能評価では、粉体取り扱い作業を模擬し、気中汚染量と表面汚染量を評価 します。 当社では、お客様が容易に拭き取りサンプリングできるキットや粉体飛散装置を開発し、 ご要望に応じたサンプリングを可能としました。 当社オリジナルのサンプリングアイテム 粉体飛散装置 吹出口 頻度分布 (%) 0 5 10 15 20 粒径サイズ (μm) 1.1 1.7 2.7 4.2 6.5 10.0 ラクトース ナプロキセン 拭き取りキット 実用新案登録: 粉体拭取具 第3194791号 キャップ装着前 キャップ装着後 サンプリングの安定性向上 コンタミネーション防止 2種類の代替試料による封じ込め性能評価 試験に2種類の代替試料を用いることで、設備や作業内容に応じた多様な封じ込め性能評価が可能となります。 【実施例】 (1) 設備の封じ込め性能評価 【基本測定】 代替試料 粉体飛散源 封じ込め目標値 設備の定常的な封じ込め性能を確認 : ラクトース : 粉体飛散装置 : 1μg/m3 (2) 個人曝露評価 【オプション測定】 代替試料 粉体飛散源 封じ込め目標値 作業手順に応じた曝露リスクの確認 : ナプロキセンナトリウム : 粉体取り扱い作業 : 0.1μg/m3 (1) 粉体飛散装置 (2) 粉体取り扱い作業 21-061

医薬品分析サービス 22 封じ込め性能評価の高感度測定技術 High-sensitivity Measurement Technique for Assessing the Containment Performance of Pharmaceutical Equipment 近年、リスクの高い高薬理活性物質の封じ込め性能評価の要求が高まっています。 当社では、お客様の取り扱い作業手順に合わせ、OEL1)カテゴリー6(<0.1μg/m3)を 満足する高感度な封じ込め性能評価をご提供します。 1) OEL: Occupational Exposure Limit (作業者許容曝露限界) 従来の測定感度と高感度測定の必要性 当社では、ラクトースを用いた封じ込め性能評価を1ng/試料(SMEPAC2)要求分析感度:3ng/試料)の感度で 実施していました。 しかし、秤量作業のような短時間の作業に合わせた評価を行う場合、ラクトースやその他 代替試料の分析感度向上が必要になります。 2) SMEPAC: Standardized Measurement of Equipment Particulate Airborne Concentration 〔製薬機器の粒子封じ込め(コンテインメント)性能評価〕 高感度測定技術 イオンの透過効率が高い液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS/MS)を用いた高感度測定技術により、 従来に比べ代替試料を2~10倍の感度で測定できるようになりました。 より短い作業時間 (例 ナプロキセンナトリウム 15分→5分)でもカテゴリー6レベルの気中濃度測定が可能です。 装置外観 代替試料における高感度化(当社比) 代替試料名 分 類 定量下限 従 来 現 在 ラクトース 糖類 1ng 0.4ng マンニトール 糖類 0.4ng 0.1ng ナプロキセン ナトリウム 鎮痛剤 0.1ng 0.01ng カテゴリー OEL (μg/m3) 1 >1,000 2 1,000~100 3 100~10 4 10~1 5 1~0.1 6 <0.1 OELカテゴリー6 (<0.1μg/m3)の1/10以下の分析値を 得るために必要なサンプリング時間 代替試料名 必要なサンプリング時間 5分 15分 30分 1時間~ ラクトース マンニトール ナプロキセン ナトリウム 従来 現在 ※SMEPAC推奨サンプリング時間:15分以上 22-029(1)

医薬品分析サービス 23 薬塵測定による交叉汚染・産業衛生リスク管理 Risk Management of Cross-contamination and Industrial Hygiene by Assessing Medicine Dust 2021年に改正されたGMP1)省令及びPIC/S2) GMPガイドラインでは、交叉汚染防止に関する 要件が加わり、品質管理のための重要なポイントとなりました。 封じ込め設備導入時は 代替粉体での封じ込め性能評価を行いますが、設備稼働時は実際の薬剤を用いて 封じ込め状態を確認(薬塵測定)することで、定常的な交叉汚染・産業衛生リスクを含めた管理が 可能となります。 1) GMP : Good Manufacturing Practice (医薬品の製造管理及び品質管理の基準) 2) PIC/S: Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme (医薬品査定協定・医薬品査察協同スキーム) 封じ込め性能評価から薬塵測定の流れ 封じ込め性能評価 ① 設備導入 (手順改善を含む) ② 仕様・手順確認 設備図面・配置図のご提供 現場確認 ③ 実施計画 封じ込め目標値・代替試料と サンプリングポイントの決定 ④ サンプリング SMEPAC3)準拠 ⑤ 分析・報告 結果説明・考察 薬塵測定 ⑥ 設備稼働 稼働時の リスク確認 ⑦ 薬剤情報開示・提供 インタビューフォームや SDSなどの資料・実薬の ご提供 ⑧ 分析条件の立ち上げ 代替試料以上の測定感度が必要 感度達成できない場合 (1) 他の構成成分での評価 (2) 代替粉体での評価を再度実施 ⑨ 実施計画 設備周辺・個人曝露 環境(排ガス)測定の策定 ⑩ サンプリング SMEPAC3)準拠 ⑪ 分析・報告 データを基にした 手順の改善計画 サンプリングポイント(例 アイソレータ) 1500mm 300mm 後方 封じ込め性能評価・薬塵測定は目標を達成するため、手順改善後に再度評価・測定を行う場合があります 3) SMEPAC: Standardized Measurement of Equipment Particulate Airborne Concentration 〔製薬機器の粒子封じ込め(コンテインメント)性能評価〕 22-034

医薬品分析サービス 24 賦形剤測定による原薬気中濃度の推定 Estimating Aerial Concentration of Active Pharmaceutical Ingredients by Measuring Amount of Scattered Tablet Excipient 医薬品製造工程におけるリスクポイント例と測定イメージ 固形剤の医薬品製造工程では、原薬秤量から包装に至るまで、さまざまな曝露リスクが 伴います。 薬塵測定は、基本的に原薬を測定対象としますが、原薬の含有量が少ない工程および原薬が 不安定などの理由で測定ができないときには、賦形剤(添加剤の一種)の気中濃度を測定する ことで、同空間に含まれている原薬濃度を推定することが可能です。 固形剤の医薬品製造工程 原 料 秤 量 造 粒 混 合 打 錠 印 刷 検 査 充 填 PT P 包 装 工程における原薬および賦形剤の気中濃度 原薬 賦形剤 面積はそれぞれの気中濃度の大小を示します 賦形剤測定による原薬気中濃度の推定 原薬と賦形剤の気中濃度の相関関係(測定例) R² = 0.9986 0 1 2 3 0 50 100 原薬A(㎍/㎥) 賦形剤B(㎍/㎥) 10 5 工程D 工程C 工程B 工程A 薬塵測定にて複数の測定地点における 原薬と賦形剤の気中濃度測定を行なった結果 高い相関関係が得られました。 賦形剤成分の測定が できれば、次のことが 可能です 錠剤 原薬A :10% 賦形剤B:90% 発塵 気中 気中の賦形剤量を測定し 構成比率から原薬の 気中濃度を推定できます 22-068 コテ ングーィ 原薬曝 露リ スク 大 原薬曝 露リス ク 小

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