X線反射率測定(XRR)による薄膜評価Thin-Film Parameters Analysis using X-Ray Reflectivity

X線反射率測定(XRR)は、臨界全反射角近傍でのX線の減衰や干渉縞のあるX線のプロファイルと計算で得られたプロファイルをフィッティングさせることで表面(界面)粗さ・膜密度・膜厚の情報を得ることができます。

原理

X線が極低角で入射する場合、屈折率は1よりもわずかに小さく(θ0>θ)、臨界全反射角以下では屈折の効果が大きくなり全反射が生じます。
全反射条件近傍の測定で、X線反射率(入射X線強度に対する鏡面反射X線強度)を測定し、薄膜モデルから計算されたX線プロファイルとフィッティングさせることで、以下の情報を求めることができます。

  • 表面(界面)粗さ(X線反射強度の減衰率変化)
  • 薄膜の密度(臨界全反射角および振幅)
  • 膜厚(周期)
XRR原理図
XRR原理図

特徴

  • 回折X線を使用しないため、非結晶も測定可能
  • 膜構造・組成情報があらかじめ分かれば、多層膜もシミュレーションにより評価可能
解析可能な薄膜
  • 試料表面  :鏡面(表面粗さ 5 nm以下)
  • 試料サイズ :30mm×30mm以上   ※サイズが小さい場合はご相談ください
  • 膜厚    :2nm~500nm
  • 必要な情報 :膜構造および膜組成情報
XRR測定装置
XRR測定装置外観
  • X線源 Cu 45kV-200mA
  • 光学系
    多層膜ミラー
    4結晶モノクロメータ
    アナライザー結晶
  • 検出器
    0次元(ポイント型)検出器
    1次元検出器

表面(界面)粗さ

入射角が、臨界全反射角(X線が全反射する角度)を超えると、X線は屈折を伴い試料内に入りこむため、入射角度の増加に伴い急激に反射X線強度が減少します。 (平滑な表面では入射角度の-4乗に比例)
表面粗さが大きくなるほど、反射X線強度の減衰が著しくなります。(下図、緑点線で表示)
界面粗さが大きくなると、高角度側の振幅の減衰が著しくなります。

XRRによる測定事例
XRRによる測定事例

赤枠青枠内の説明は下記参照

膜密度

膜密度は全反射角および振幅から算出します。

  • 物質の(電子)密度により、X線の臨界角(全反射角)が異なる。
  • 密度のコントラストが振幅に反映されます。
    密度の差大→屈折率の差大→振幅大
    (多層膜の解析に利用)
臨界角近傍の拡大
臨界角近傍の拡大

膜厚

膜厚により干渉の周期が変動します。

  • 膜厚 薄い:周期(Δθ) 大
  • 膜厚 厚い:周期 小
振幅の拡大
振幅の拡大

事例 Si3N4 15nm/Si基板

狙い膜厚さ15nmのSi3N4膜(Si基板上)の測定プロファイルに対し、シミュレーションにより、表面(界面)粗さ・膜密度・膜厚を算出した事例をご紹介します。

Si3N4単層と仮定して解析(Si基板の密度既知)

Si3N4単層と仮定して解析
膜種 膜厚
(nm)
膜密度
(g/cm3)
粗さ
(nm)
1 Si3N4 15.0 2.44 0.5
基板 Si (2.33) 0.0

狙いのSi3N4単層と仮定し解析した結果、測定データとシミュレーションの振幅が大きく異なります。(残差大)
Si3N4層およびSi基板と密度の異なる層が存在する可能性がうかがえます。

矢印

Si3N4(15nm)/Si基板の間にSiO2があると仮定として解析

Si3N4(15nm) /Si基板の間にSiO2があると仮定として解析
膜種 膜厚
(nm)
膜密度
(g/cm3)
粗さ
(nm)
2 Si3N4 15.1 2.44 0.5
1 SiO2   1.0 2.16 0.0
基板 Si (2.33) 0.0

界面層としてSiO2層を仮定し解析した結果、測定データとシミュレーションはよく一致することから界面層の存在を示唆する結果が得られます。このように、埋もれた界面が存在しても解析が可能です。

[ 更新日:2024/02/26 ]

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