医薬品内部のX線CT観察3D Observation of Internal Structure of Medicine by 3D X-ray Microscopy
医薬品は、服用のしやすさ、取り扱いの容易さ、においや苦味の抑制など便利な一方、適切な部位で適量が作用するように、溶ける箇所・時間などを調整する重要な役割があります。3次元X線顕微鏡(X線CT)により、内部状態を3次元的に可視化することで非破壊にて錠剤の紛薬などの分布状態やカプセル内の粒子の大きさや粒度分布も確認できます。
X線CTは、X線透過・光学ズーム・CT構築で構成され、対象物の内部を非破壊で3次元観察することが可能です。
また、試料を透過したX線を光に変換して光学レンズで拡大するため、高分解能・高コントラストの観察ができます。
錠剤には、服用しやすさ、取り扱いの容易さ、においや苦味の抑制などの利便性に加え、適切な部位で適量が作用するよう、溶ける箇所・時間などを調整する重要な役割があります。
X線CTでは、コーティング層、粉薬の分布状態などの内部構造を確認でき、非破壊であるため、乾燥・湿潤などによる状態変化の確認にも活用できます。
錠剤はさまざまな形状があり、作製に当たって多くのプロセスパラメータを設計する高度な技術が必要とされます。そのようにして作製された錠剤の中には、キャッピングなどのように打錠障害を有するものがあり、その原因を特定し、設計技術に生かすことが重要です。
X線CTでは、錠剤内部を3次元的に観察でき、キャッピングなどの原因となり得る空隙を確認できます。
打錠条件によって、錠剤内部に空隙が残る場合や密度分布が変化する場合があります。
X線CTでは、非破壊かつ3次元での観察により、空隙分布や密度変化の数値化が可能で、打錠条件の改善に役立てることができます。
空気のX線吸収率はほぼゼロで輝度は小さくなります。そのため、各領域内の固体の占める割合により輝度のヒストグラムの歪み方が異なることから、これを歪度として数値化することができます。空隙率が大きいほうが歪度が小さくなります。
歪度が大きい場所を明るく、歪度が小さい場所を暗く表示しています。中心部で歪度が小さいため、中心部は空隙率が大きく、低密度であることが示唆されます。
※試料ご提供元:株式会社畑鐵工所 様
OD錠は口腔内で速やかに崩壊しなければなりません。設計どおりに崩壊しない場合には、OD錠内部の状態を把握することも望まれます。
X線CTは、内部構造を非破壊で観察できるツールであり、苛酷試験前後のOD錠の内部構造の変化を捉えることができます。
OD錠(Orally Disintegrating Tablets:口腔内崩壊錠)
OD錠内部の経時変化の影響で崩壊時間が長くなっていることが判明しました。
ソフトカプセルの内用液が漏れ出す不具合の原因の一つとして、皮膜の厚みの不均一が考えられます。
X線CTでは、カプセル全体の皮膜を3次元で観察することができ、またデータ処理を行うことによって、皮膜の厚みに対応するカラー表示も可能です。このような可視化によって、カプセルのできばえを評価することができます。
打錠条件によって、錠剤内部に空隙が残る場合や密度分布が変化する場合があります。
X線CTでは、空隙の分布や密度の変化を3次元で観察して数値化でき、打錠条件の改善に役立てることができます。
X線CTでは、対象物内部のX線吸収率の違いを3次元で可視化することにより、非破壊でカプセル内部物質の粒度分布を調べることができます。
塩を封入したカプセルの内部観察
塩粒子を含むカプセルのX線CT像から個々の塩粒子を識別し、粒子の大きさ・表面積などを統計的に解析することが可能です。
測定結果から得られる値 | 平均 | 標準偏差 |
---|---|---|
塩粒子の体積 | 0.17mm3 | 0.090mm3 |
塩粒子の表面積 | 1.9mm2 | 0.66mm2 |
塩粒子の直径1) | 0.67mm | 0.12mm |
ヒストグラム
* 粒子を球と仮定し、粒子の体積から直径を計算
ヒストグラム中の理論曲線は対数正規分布を表しており、今回使用した塩粒子の体積・表面積・直径の分布は、どちらも対数正規分布とよく一致する結果が得られました。
錠剤には、適切な部位で適量が作用するように、内部成分の割合には重要な意味があります。
X線CTにより、内部状態を3次元的に可視化することで紛薬などの分布状態を確認できます。
試料 | 模擬錠剤の内部成分 混合比(重量%) | ||
---|---|---|---|
乳糖+ コーンスターチ |
ステアリン酸 マグネシウム |
酸化鉄 (模擬原薬) |
|
1 | 92 | 3 | 5 |
2 | 96 | 3 | 1 |
酸化鉄を含む内部粒子を3次元的に画像化できます
試料1 X線CT 3次元像
酸化鉄 混合比5%
試料2 X線CT 3次元像
酸化鉄 混合比1%
酸化鉄 混合比5% 酸化鉄 混合比1%
X線CTで観察した錠剤内部と同一箇所の断面を出し、SEM/EDSで観察しました。添加剤に固有な元素(MgやCl)の分布から分散状態が分かります。
[ 更新日:2025/02/10 ]
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