3次元X線顕微鏡(X線CT)観察3D X-ray Microscopy

3次元X線顕微鏡(X線CT)は、対象物の内部を非破壊で観察する顕微鏡です。当社では、X線CTの受託分析サービスを行なっています。
一般的なX線透視観察装置と異なり、試料を透過したX線を光に変換し、光学レンズにより拡大する特徴があります。そのため、内部の状態および構造・欠陥について高分解能・高コントラストな観察が可能です。また、CTにより3次元(3D)像の構築が可能であるため、各方向からの断層イメージを非破壊で得ることができます。

CT : Computed Tomography (コンピュータ断層撮影)

分析サービス内容

分析試料

半導体電子部品一般材料電池医薬品

装置スペック

  • 観察装置
管電圧30~160kV
管電力最大10W
最大試料サイズ外径100mm (重量:15kg)
最大分解能0.7μm (試料サイズ/観察視野に依存します)
最大視野直径50mm×高さ50mmの円筒形
階調性能 16bit (65536階調)
透過可能な厚さの目安 アルミ(~22mm)・銅(~2.5mm)・金(~0.1mm)
  • 画像処理
画像処理ソフト AVIZO
データ形式   断面像/3Dイメージ像(jpg)
生データ(tiff)
動画ファイル(mp4)
3Dデータ(STL)
解析数値データ(xlsx)
※Web会議で観察データ(3Dイメージ)をご覧いただけます
主な用途不具合品における欠陥のサイズ/体積
材料内部における空隙(ボイド)のサイズ/体積/割合
繊維材料における繊維の長さ/径/配向
粒子構造における粒子の体積/表面積/粒度分布

原理

X線透過観察

X線は物質を透過する性質があります。X線が試料を透過する際に一部は吸収されます。吸収の割合は、材料の密度が高く(原子番号が大きい)、厚さが厚いと大きくなるため、透過するX線強度が低くなります。

X線透過観察

拡大方式

通常の方式では、透過したX線を投影して拡大するため、より高分解能で観察するには、試料をX線源に近づける必要があり、拡大率は試料サイズによります。X線CTは、投影拡大に加え、X線を光に変換して光学レンズでさらに拡大するため、試料サイズに関わらず高分解能での観察が可能です。

拡大方式図
X線CT装置内
X線CT装置内

※光学レンズの拡大率:4倍/20倍/40倍

X線CT

観察対象のサンプルに対して360°のX線透過情報を基に、コンピュータで計算処理を行い試料の3Dデータを構築します。回転ピッチを狭くし、より多くの情報を得ることで、精度の高い3Dデータを構築できます。

X線CT観察イメージ
X線CT観察イメージ
X線透過像2次元(2D)データとX線CT3次元(3D)データ断面像

事例1 半導体製品の内部構造観察

半導体製品に求められる、より小型化、より高機能化に伴い、パッケージの内部は3次元化・複雑化しています。そのため、故障解析を行う際には、できるだけ非破壊で内部情報を把握することが重要になります。
X線CTでは、ワイヤ・フレームなどの金属材料に加え、チップ・接着剤・樹脂など、軽元素材料の状態を3Dで観察することができるため、より確実な故障解析・構造解析などに有効です。

X線CT像 (3D像)
X線CT像 (3D像)
X線CT像 (任意断面)
X線CT像 (任意断面)

事例2 半導体製品の内部異常観察

半導体製品のチップや基板などパッケージの内部の異常を観察することが可能です。同じく非破壊検査装置である超音波顕微鏡(SAM)と組み合わせることで、異常箇所の検出から詳細観察まで対応が可能になります。

半導体パッケージの鋼球落下評価
半導体製品の内部観察
異常箇所のX線CT像 (基材平面像)
X線CT像 (基材平面像)
異常箇所のX線CT像 (断面B像:基板クラック)
X線CT像 (断面B像:基板クラック)

事例3 MEMSデバイスの内部構造観察

MEMS構造体の一部を画像処理で透明にすることにより、各素子の立体的な位置関係を把握しながら、断面構造を観察できます。

MEMS: Micro Electro Mechanical Systems

MEMSデバイスの内部構造観察

事例4 LED蛍光体の粒度分布測定

LED内部の蛍光体を3次元的に可視化することができます。また、3Dデータのコントラスト差を基に蛍光体の情報を抽出することで、粒子の体積・表面積など、粒度分布を統計的に解析できます。

LED蛍光体の粒度分布測定

粒度分布 測定結果


測定項目 最小 最大 平均
体積 125μm3 39,819μm3 747μm3
表面積 25μm2 11,623μm2 400μm2

※本データは5画素(25μm2、125μm3)以下をカットしています。

LED蛍光体の粒度分布測定

事例5 プリント基板内の内部構造観察

プリント配線基板内のガラス繊維・樹脂・銅配線を3Dで明確に観察することができます。そのため、プリント基板の故障原因となる、異物や空気層の混入、基板クラックなどの確認に有効です。

プリント基板(ガラエポ基板)外観
プリント基板(ガラエポ基板)外観
X線CT像 (3D像)
X線CT像 (3D像)
X線CT像 (任意断面)
X線CT像 (任意断面)

事例6 バイオマス炭化物の内部構造観察

バイオマス炭化物など軽元素材料でも、高コントラストの画像が取得できます。
明確なコントラスト差を得ることにより、その後のデータ解析の精度も向上します。

X線CT像 (3D像)
X線CT像 (3D像)
X線CT像 (任意断面)
X線CT像 (任意断面)

試料ご提供元:東京工業大学大学院理工学研究科 機械制御システム専攻 渡部弘達 様

事例7 CFRP内部の観察

CFRPは、炭素繊維に樹脂を染み込ませシート状にしたものを積層することで、強い強度と軽さを併せもつ材料として各分野で使用されています。
X線CTでは、強度に密接に関係する繊維の配向、密度や樹脂中の空気層など、内部の情報を観察できます。

CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics (カーボン繊維強化プラスティック)

CFRP基板外観
CFRP基板外観
X線CT像 (3D像)
X線CT像 (3D像)
X線CT像 (任意断面)
X線CT像 (任意断面)

事例8 セラミックス内部構造観察

セラミックス製品は、耐熱性・耐食性・電気絶縁性に優れることから、さまざまな用途で使用されていますが、内部の欠陥はそれらの特性に重要な影響を与えることが考えられます。
X線CTでは、気泡や割れなどの内部欠陥の詳細を確認できます。

セラミックス基板外観
セラミックス基板外観
X線CT像 (3D像)
X線CT像 (3D像)
内部欠陥抽出 (3D像)
内部欠陥抽出 (3D像)

事例9 リチウムイオン電池の内部構造観察

モバイル機器の発展により、リチウムイオン電池など二次電池の需要がますます増加しています。
X線CTでは、電池内部の正極・負極材・TAB端子・封口板・保護回路基板などの内部構造を非破壊で観察できます。
電池の繰り返し使用に伴う膨張や変形・切断破壊の様子を捉えることにより、劣化部位の特定が可能です。

使用済み角筒型電池のX線CT像
使用済み角筒型電池のX線CT像
円筒型電池のX線CT像
円筒型電池のX線CT像
スマートフォン用アルミラミネート型電池のX線CT像
スマートフォン用アルミラミネート型電池のX線CT像

[ 更新日:2024/08/19 ]

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