熱重量・示差熱同時分析/質量分析(TG-DTA/MS)Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis / Mass Spectrometry

TG-DTA/MSは、試料温度を変化させ、それに伴う重量変化と吸熱・発熱反応とを同時に観測するとともに、発生したガスを質量分析計にて測定することにより、発生ガスの定性と発生挙動解析が可能です。

原理

  • 熱重量測定(TG)
    試料を加熱しながら重量変化を測定することで、熱分解・酸化・脱水などの質量変化を伴う反応の温度が分かります。
    また、質量増減の定量的な測定が可能です。
  • 示差熱分析(DTA)
    試料と基準物質を同一炉内へ対称に配置して加熱しながら両者の温度差を測定し、温度差の変化から、融解・熱分解などの吸発熱反応の有無が分かります。
  • 質量分析(MS)
    質量分析により、発生したガス種の推測ができます。
TG-DTA/MSにより検出できる主な現象
TG-DTA/MSにより検出できる主な現象

特徴

  • 試料形態   :固体(粉末・フィルム・ブロックなど)および液体
  • 試料量    :数mg~
            (5.2mmφ×5.1mmの容器内)
  • 測定雰囲気  :基本設定 He
            対応可能 N2,Air
  • 温度     :室温~1,300℃
  • 昇温速度   :基本設定 20℃/min
            対応可能 1~20℃/min
  • 質量範囲   :m/z 1~410
  • 試料の熱(分解)反応過程の情報が得られます。
  • 各反応温度領域で発生しているガス種を推定できます。
  • 測定雰囲気ガス種による酸化反応の過程の情報が得られます。
  • 揮発や熱分解により発生する成分の化学種や発生量を温度変化に対して追跡することができます。

用途

  • セラミック焼結体からの脱ガス分析
  • 電池正極・負極材料の熱安定性評価
  • 蛍光体材料からの脱ガス分析
  • 医薬品の熱安定性評価
  • ゴム・フィルムの耐熱性評価
  • 触媒材料の吸脱着性能評価

事例 CaC2O4・H2O

測定雰囲気:He

測定雰囲気:He

シュウ酸カルシウム水和物をTG-DTA/MSで測定した事例です。
加熱温度に従い3段階の重量減少と、それに伴う質量が観測されました。

(1) CaC2O4・H2O → CaC2O4 + H2O(m/z 18) ↑ :理論値12.3%
(2) CaC2O4 → CaCO3 + CO(m/z 28) ↑ :理論値19.2%
(3) CaCO3 → CaO + CO2(m/z 44) ↑ :理論値30.1%

測定雰囲気:Air

測定雰囲気:Air

キャリアガスAirにおいて500℃近傍にHeガスでは見られなかった発熱ピークが出現しました。
この領域では、(2)式で発生したCOがAir中のO2との酸化反応により、CO2が生成していることが分かります。

(2)' CaC2O4 → CaCO3 + CO
 CO+1/2O2 → CO2(m/z 44) ↑
 m/z 12:CO2由来のフラグメントイオン

測定雰囲気をHeからAirにすることで、一般環境下に近い状態での加熱挙動結果が得られます。特に、Air中の酸素による酸化反応に伴う発生ガス種の結果を得ることができます。

事例 医薬品の熱安定性評価

医薬の熱物性をTG-DTAで測定すると同時に、発生するガス種を質量分析で推定します。熱反応の温度、質量変化、吸発熱の有無と、各反応温度領域で発生するガス種から、どのような熱反応が生じているかを推測できます。

■TG-DTA/MSによる市販の錠剤の評価

TG-DTA/MSによる市販の錠剤を評価

包装された錠剤を60℃の大気環境下で6時間放置した後、錠剤を取り出して分析しました。110℃近傍にCO2の発生が見られます。これは、大気中のCO2が錠剤に吸収されものが放出されたか、あるいは、酸化によりCO2が生成したと考えられます。

[ 更新日:2024/02/27 ]

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