超音波顕微鏡(SAM)Scanning Acoustic Microscope

超音波顕微鏡は、非破壊で、観察対象内部の剥離・クラック・ボイド・異物などの欠陥を観察することができる手法です。

超音波顕微鏡の概要

超音波は異なる物質に伝播すると、一部が反射し、残りが透過します。観察対象に空隙が存在する場合、強い反射波が検出され、透過波はほとんど検出されません。この特性を利用することで、対象物内部の異常を非破壊で観察することが可能です。

目的・用途

  • 電子部品・半導体パッケージの内部検査(界面の剥離・ボイド)
  • ウェーハ検査(貼り合わせ界面の剥離・空隙)
  • セラミック・金属・プラスチックなど一般材料の内部検査(界面の剥離・クラック)

試料サイズ・観察分解能

  • 試料サイズ:300mm×300mmまで
  • 方位分解能:試料の構造・材質・サイズによって観察条件が変わるため、数十~数百μmΦの幅があります。一般的な半導体内部であれば、100μmΦ~が目安となります。

観察時の留意事項

  • 超音波信号を伝播させるため、水槽(純水)に浸漬して観察します。
  • 試料の表面形状・観察界面は平坦であること、また水槽内の設置についても平坦にする必要があります。

装置外観

超音波顕微鏡外観
超音波顕微鏡外観(拡大)

超音波プローブ

概要

超音波プローブは、超音波を発信、受信する振動子を組み込んだセンサです。発信する超音波の周波数によって複数のプローブがあります。プローブの先端には超音波を収束させる音響レンズが搭載されており、焦点を有します。レンズ中心から収束点までの距離を焦点距離と言います。

超音波プローブ
音響レンズ
焦点距離

焦点について

超音波信号が収束する焦点は、信号強度が最も高くなり、鮮明な画像が得られます。焦点からずれるに従って、信号強度は低くなり、画像もぼやけていきます。

焦点について

 

周波数と分解能の関係

周波数が高くなると分解能は良くなりますが、音の減衰が大きくなるため、透過力は小さくなります。部材や構造に適したプローブを選定する必要があります。

周波数と分解能の関係
周波数による解像度の違い
周波数による解像度の違い
(箇所 約50μmφ)

測定方法

超音波顕微鏡は2種類の測定方法があります。試料構造・目的に応じて適切な方法で観察を行います。

反射法

試料内部の界面で反射した信号を検出します。

  • 用途:試料表面から第一界面の密着性の確認。
  • 強み:界面の特定ができる。分解能が高い。
  • 弱み:積層構造など複雑な構造の観察が難しい。

透過法

試料内部を透過した信号を検出します。

  • 用途:試料内部全体の異常の確認。
  • 強み:積層構造など複雑な構造でも観察が可能。
  • 弱み:界面の特定ができない。分解能が低い。

異常検出の原理

  • 超音波は空隙で100%反射するため、空隙より下に信号が透過しません。
  • 空隙は正常な箇所より信号が強く、界面の材質によって波形の位相が反転します。
  • 正常な箇所との信号強度差、波形の位相を確認することで異常を検知できます。
反射波形
異常検出の原理
透過波形

事例1 ウェーハ貼り合わせの密着性観察-反射法-

光デバイス・高周波デバイス・MEMSデバイスなどで用いられるウェーハ接合において、貼り合わせ部の剥離、気泡や異物のかみ込みは重大な欠陥になります。反射像で白色に見えている箇所は、超音波の反射強度が強い箇所を表しており、接合材の空隙を検出しています。

ウェーハ貼り合わせの密着性観察

事例2 半導体パッケージ内部の剥離観察-反射法-

試料に超音波を照射したときに得られる反射波の情報から、内部の異物・クラック・剥離などを識別することができます。強い負極性の反射波が見られた箇所は、樹脂からフレーム界面で剥離が発生しています。

半導体パッケージ(故障品)の反射観察像
半導体パッケージ(故障品)の
反射観察像
超音波波形(反射波)
超音波波形(反射波)

事例3 半導体パッケージ内部全体の観察-透過法-

半導体パッケージは、さまざまな材料で構成されています。近年、半導体パッケージは、チップを多段スタックすることにより、高性能化と小型化が進んでいます。多段スタックのように複数の界面が存在する場合、反射波で下層部の観察を行うと、各界面での音波の減衰や多重反射の影響で正確な情報が得られないことがあります。
透過法は、観察対象を透過する音波を検出して画像化するため、複数界面が存在する場合でも内部の異常を観察することができます。

半導体パッケージ(故障品)の透過観察像
半導体パッケージ(故障品)の透過観察像
透過法の観察イメージ
透過法の観察イメージ

事例4 プリント配線基板の観察-反射法・透過法-

電子機器で用いられるプリント配線基板内部の異常を観察することができます。表層側の界面は反射観察で精度良く確認でき、多層化し複数の材料界面が存在する基板内部は、透過観察で剥離を検出できます。

プリント配線基板の観察-反射法・透過法-

事例5 CFRP内部の観察-反射法-

CFRPは、炭素繊維に樹脂を染み込ませシート状にしたものを積層することで、強い強度と軽さを併せもつ材料として各分野で使用されています。積層構造であることから、層間の剥がれが強度低下に結び付くことが懸念されます。超音波顕微鏡は、問題になりそうな層間の剥がれを検出することができます。

CFRP内部の観察-反射法-

CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics (カーボン繊維強化プラスティック)

[ 更新日:2025/10/30 ]

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