超音波顕微鏡(SAM)Scanning Acoustic Microscope
超音波顕微鏡は、非破壊で、観察対象内部の剥離・クラック・ボイド・異物などの欠陥を観察することができる手法です。
超音波は異なる物質に伝播すると、一部が反射し、残りが透過します。観察対象に空隙が存在する場合、強い反射波が検出され、透過波はほとんど検出されません。この特性を利用することで、対象物内部の異常を非破壊で観察することが可能です。


超音波プローブは、超音波を発信、受信する振動子を組み込んだセンサです。発信する超音波の周波数によって複数のプローブがあります。プローブの先端には超音波を収束させる音響レンズが搭載されており、焦点を有します。レンズ中心から収束点までの距離を焦点距離と言います。



超音波信号が収束する焦点は、信号強度が最も高くなり、鮮明な画像が得られます。焦点からずれるに従って、信号強度は低くなり、画像もぼやけていきます。

周波数が高くなると分解能は良くなりますが、音の減衰が大きくなるため、透過力は小さくなります。部材や構造に適したプローブを選定する必要があります。


超音波顕微鏡は2種類の測定方法があります。試料構造・目的に応じて適切な方法で観察を行います。
反射法
試料内部の界面で反射した信号を検出します。
透過法
試料内部を透過した信号を検出します。





光デバイス・高周波デバイス・MEMSデバイスなどで用いられるウェーハ接合において、貼り合わせ部の剥離、気泡や異物のかみ込みは重大な欠陥になります。反射像で白色に見えている箇所は、超音波の反射強度が強い箇所を表しており、接合材の空隙を検出しています。

試料に超音波を照射したときに得られる反射波の情報から、内部の異物・クラック・剥離などを識別することができます。強い負極性の反射波が見られた箇所は、樹脂からフレーム界面で剥離が発生しています。


半導体パッケージは、さまざまな材料で構成されています。近年、半導体パッケージは、チップを多段スタックすることにより、高性能化と小型化が進んでいます。多段スタックのように複数の界面が存在する場合、反射波で下層部の観察を行うと、各界面での音波の減衰や多重反射の影響で正確な情報が得られないことがあります。
透過法は、観察対象を透過する音波を検出して画像化するため、複数界面が存在する場合でも内部の異常を観察することができます。


電子機器で用いられるプリント配線基板内部の異常を観察することができます。表層側の界面は反射観察で精度良く確認でき、多層化し複数の材料界面が存在する基板内部は、透過観察で剥離を検出できます。

CFRPは、炭素繊維に樹脂を染み込ませシート状にしたものを積層することで、強い強度と軽さを併せもつ材料として各分野で使用されています。積層構造であることから、層間の剥がれが強度低下に結び付くことが懸念されます。超音波顕微鏡は、問題になりそうな層間の剥がれを検出することができます。

CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics (カーボン繊維強化プラスティック)
[ 更新日:2025/10/30 ]
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