二次イオン質量分析(SIMS)Secondary Ion Mass Spectrometry
二次イオン質量分析(SIMS)は、ppbレベルの極微量不純物元素を同定・定量できる非常に高感度な分析手法です。 スパッタリングしながら測定するため、膜中の不純物の深さ方向分布を得ることができます。
真空中で固体表面にCs+やO2+などの一次イオンを照射すると、試料表面から電子・中性粒子・イオンが弾き出されます(スパッタリング)。
試料から放出された二次イオンの質量を分析することにより、元素の種類とその濃度を明らかにします。質量分析では、干渉・妨害するものがほとんどないため(イオン種同士の干渉を除く)、非常に高感度な分析が可能です。また、イオン照射により試料が次第に削れていくため、連続的にデータを取得することにより深さ方向分析ができます。質量分析計には磁場型・四重極型・飛行時間型などの種類があり、分析の目的に応じて使い分けます。
比較項目 | 磁場型SIMS | 四重極型SIMS | 飛行時間型SIMS |
---|---|---|---|
分析元素 | 全元素(H~U) | 有機分子 | |
高感度 | ◎ | ○ | △ |
質量分解能M/ΔM | ~10,000 | ~300 | ~11,500 |
絶縁膜 | ○ | ◎ | ◎ |
定量分析 | ○ | ○ | △ |
深さ分解能 | ○(5nm~) | ◎(1nm~) | ◎(1nm~) |
極表面分析 | △ | ○ | ◎ |
分析領域 | ~60µmφの範囲 (最小8µmφ) |
100µm×100µmの範囲 (最小30µm×30µm) |
数十~500µm2 |
最大試料サイズ | 1㎝×1㎝ | 1㎝×1㎝ | ~200mmウェーハ マスク |
※飛行時間型SIMSについては、200mm以下のウェーハ・フォトマスクが測定可能
絶縁物中のF分布について評価しました。
Fが下層のFSG膜(Fを添加したSi酸化膜)から上層のSiO2膜へ拡散していることが分かります。
絶縁物中においても、チャージアップを防ぎながら、不純物分布の評価をすることが可能です。
※元素の横の矢印は参照する縦軸を示しています
Si同位体超格子[28Si/30Si]について評価しました。
本評価では、低エネルギー条件により、約2nmの深さ方向分解能が得られています。
一次イオン照射エネルギーを下げることにより、ミキシング等の影響を抑えて高い深さ方向分解能を得ることができます。薄膜の積層や急峻な不純物分布に対して、より真に近い分布情報が取得可能です。
■試料ご提供元:慶応義塾大学理工学部 伊藤公平グループ 様
極表面にドーピングされた浅いBの分布について、3つの一次イオンエネルギー条件[250/350/500(eV)]にて評価しました。
急峻な分布領域(~10nm)において、350eV、500eVではBが深さ方向に押し込まれており、250eVと比べて深さ方向分解能が不十分であることが分かります。
実試料の分布に適した一次イオンエネルギー条件の選定が必要です。
Si中にイオン注入された31Pについて評価しました。
Si中における31Pは、質量数の近接した30SiH、29SiH2、28SiH3が妨害イオンとして存在することから、通常の測定では真の値より高く検出されてしまいます。
磁場型SIMSでは、これらの妨害イオンを高質量分解能(M/ΔM~10,000 1万分の1の質量差識別)で分離することによって、31Pについて真の分布評価が可能です。
パワーMOS製品において、基板中で結晶欠陥の原因となる軽元素(H,C,N,O,F)について評価しました。
市販品のパワーMOS製品を分解してチップを取り出し、上層膜を除去後に基板表面からSIMSによる分析を行いました。H,N,Fは検出下限値レベルであるのに対して、C,Oは基板中に含まれることが分かります。
このように、SIMSは材料中の軽元素、特にHについて評価可能な数少ない手法の一つです。
※元素の横の矢印は参照する縦軸を示しています
[ 更新日:2024/02/26 ]
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