ナノ粒子の元素ごとの粒径分布測定Measurement of Size Distribution for Each Element of Nanoparticle

ナノマテリアルは、化粧品、家電・電気電子製品、塗料・インクなどの分野で幅広く使用されており、シリカ・二酸化チタン・ニッケル・アルミナ・酸化亜鉛・銀・酸化セリウムといった無機成分で構成されています。これらのナノ粒子を分散溶媒と一緒にICP質量分析装置に直接導入して、ナノ粒子の粒径分布、凝集の有無を把握できます。ナノマテリアル製品において、その特性の良否や劣化度などを評価するうえで、元素ごとの粒径分布や凝集状態の測定が役立ちます。

シングルパーティクル(SP)-ICP-MSシステムの原理

ナノ粒子を含む分散溶媒を直接ICP-MSに導入して得られる信号強度から、ナノ粒子の大きさを算出し、ナノ粒子の粒径分布を把握できます。

測定チャート(イメージ)と金ナノ粒子(平均粒径50nm)の粒径分布測定例

特徴

  • 溶解成分と粒子成分を分けて測定可能
  • 元素ごとに粒径分布が分かる
  • 元素ごとに粒子濃度が分かる
  • 粒子の凝集の有無が分かる
  • 測定粒径範囲:数nm~数百nm
    ※測定粒径は、測定元素や形態による
  • 粒子は球状換算で算出

試料条件

  • 粒子は空洞・層状でないこと
  • 粒子は試料溶液中で均一に分散していること
  • 粒子組成の密度が分かっていること
  • 粒子組成が多量にイオン化していないこと
  • 高濃度試料の場合、凝集や溶解しない条件で希釈が可能であること

SP-ICP-MSによるIPA(イソプロピルアルコール)中無機成分分析

半導体プロセスの洗浄・乾燥工程において汎用されているIPAの不純物の半定量分析で検出された成分について、SP-ICP-MS測定を実施して存在形態を明らかにする評価事例をご紹介します。

試料調製

IPAにTiO2ナノ粒子(平均粒径:50nm)およびAl2O3ナノ粒子(平均粒径:80nm)を添加し、超音波を10分間印加して作製した模擬試料を使用しました。

有機溶媒直接導入- 半定量分析

ICP-MSに試料を直接導入して半定量分析を行い、64元素の不純物濃度を確認しました。その結果、下表のとおり、粒子として添加したAl,Tiのほか、IPA中に含まれる無機成分やAl2O3,TiO2粒子中から溶出した金属成分として、Na,Mg,K,Ag,Ca,FeおよびZnが存在していることが分かりました。

IPA中不純物成分の半定量分析結果  (単位:ng/mL)
試料 Li B Na Mg Al K Ca Sc Ti V Cr
模擬IPA <0.01 <1 69 1.4 1.2 0.5 7.3 <0.2 0.7 <0.05 <0.05
試料 Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Rb
模擬IPA <0.05 3.5 <0.01 <0.05 <0.05 <0.05 1.5 <0.01 <0.01 <0.2 <0.01
試料 Sr Y Zr Nb Mo Ru Rh Pd Ag Cd In
模擬IPA <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 1.2 <0.01 <0.01
試料 Sn Sb Te Cs Ba La Ce Pr Nd Sm Eu
模擬IPA <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01
試料 Gd Tb Dy Ho Er Yb Lu Hr Ta W Re
模擬IPA <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01
試料 Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Th U
模擬IPA <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01

SP-ICP-MS測定

検出元素に対し、SP-ICP-MS測定した結果、Ti,Alは右図のような粒子を形成していました。平均粒径はいずれも添加前の粒子の平均粒径よりも高めになっていることから、今回の分散条件では凝集していることが判明しました。
そのほか、Al2O3はIPAにわずかに溶解し、その他の検出元素は、イオンとして存在していたことが判明しました。

IPA中TiおよびAlのSP-ICP-MS測定結果
粒子1) 平均粒径
(nm)
粒子濃度
(粒子/mL)
溶液濃度
(ng/mL)
TiO2 127 6E+4 <0.05
Al2O3 250 7E+4    0.08

1) TiO2の密度を4.23(g/cm3)、Al2O3の密度を3.95(g/cm3)、粒子は球状として算出しました。

SP-ICP-MSによる粒径分布測定結果
SP-ICP-MSによる粒径分布測定結果

SP-ICP-MS法では、従来の粒径分布測定では得られなかった各元素の粒径分布、粒子濃度や溶液濃度などの有用な情報が得られます。

関連情報

YouTubeサイト : 受託分析サービス動画配信(SP-ICP-MSの説明)

[ 更新日:2024/02/27 ]

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