剥離原因への解析アプローチAnalysis approach to causes of delamination.

半導体や電子部品は、使用されている各材料の物性値の違いによる応力、界面の酸化や汚染による密着性の低下、ポップコーン現象(水蒸気爆発)など、さまざまな要因で剥離することがあります。対策には、まず、非破壊観察で剥れている界面を特定し、次に、断面観察や表面分析により原因の手がかりを得ることが不可欠です。
また、密着性を数値化して評価することで、不具合対策の有効性を検証できます。

剥がれが発生してしまったら・・・

各部材では、その物性値の違いや、酸化や汚染、ポップコーン現象(水蒸気爆発)など 様々な要因で剥がれが発生します。剥がれの原因を究明するには、適切な前処理と分析装置の選定が必要です。

さまざまな箇所での剥がれ

さまざまな箇所での剥がれ

※一般的なパッケージ・実装基板の解析は、基板実装解析をご覧ください。

解析へのアプローチ

解明したいことに合わせて、さまざまな手法をご提案します。

どこで剥がれてる?
◆非破壊で見てみたい!
◆断面から見てみたい!
剥がれの原因は?
◆汚染元素?有機汚染?無機汚染?
◆酸化?
非破壊で色々調べたい!
◆非破壊で分析!
密着強度はどのくらい?
◆数値化してみよう!

 

壊さず状態を見てみよう(非破壊観察)

まずは、どの界面で剥がれが発生しているかを特定する必要があります。その結果から、剥離した原因の推察、解析手法の選定を行います。

超音波顕微鏡(SAM)観察

反射SAM像と超音波波形
表面 反射SAM像
裏面 反射SAM像
超音波波形

 

超音波顕微鏡は、試料に超音波を照射したときに得られる反射波および透過波の情報から、内部の異物・クラック・剥離などを観察できます。波形を確認し、強い反射波が検出された箇所が剥がれ箇所です。
平面的な観察は得意ですが、縦方向に延びる剥がれやクラックは検出できません。

3次元X線顕微鏡(X線CT)観察

反射SAM像と超音波波形

3次元X線顕微鏡(X線CT)は、対象物の内部を非破壊で観察する顕微鏡です。超音波顕微鏡観察では検出できなかったモールド樹脂中のクラックが観察できています。
また、ダイパッドやチップ-モールド樹脂間の剥離が明瞭に観察できます。

 

Point
超音波顕微鏡と3次元X線顕微鏡で、剥離やクラックの発生状況を観察することができます。

 

壊さず内部を分析しよう(非破壊分析)

蛍光X線分析は、サンプルを大気下で非破壊分析できる特徴を生かし、製品中の構成元素を分析することができます。

元素マッピング

透過X線像と元素マッピング像
 透過X線像
元素マッピング像

 

アウターリード部分からFeとNi、インナーリードの先端からAgを検出し、リードフレーム母材はFe-Ni系で、リード先端部分にAgめっきが施されていることが分かります。
また、外装めっき成分であるSnがモールド樹脂内部に浸入している様子も分かります。

特定箇所の分析

リード部Snマッピング像と特定箇所の検出元素分析
 リード部Snマッピング像
 
Point
非破壊で製品中の構成元素を分析することができます。また、外装めっき成分のSn,Agが樹脂内に浸入していることが分かります。
 【検出元素】
 Fe,Ni → リードフレーム
 Br,Sb → モールド樹脂内(難燃剤)
 Sn,Ag → 外装めっき

 

剥がれ面の分析をするためには?

汚染による剥離の場合、無機汚染と有機汚染があります。有機物による汚染である可能性を考えて、サンプルを物理的に破壊して、剥がれ面を露出させます。

物理分解

物理分析
 
ダイパッド露出面
 
モールド樹脂露出面

断面観察をしても・・・

断面観察

断面から観察すれば、剥離やクラックを確認できます。しかし、研磨では剥離箇所に研磨クズなどが入り、分析には適しません。一方、イオンミリングは二次汚染は発生しませんが、汚染が非常に薄い場合は、剥がれの原因となる物質を検出できません。

 

Point
剥離の原因となった物質を同定するためには、物理分解で剥がれ面を露出させ、分析をすることが重要です。

どうして剥がれたんだろう?

EPMA分析では、電子ビームを照射することで発生する特性X線の波長やエネルギーから 無機物の分析や元素の分布を調査することができます。

EPMA分析

EPMA分析
EPMA定性分析
EPMAマッピング分析

露出させた剥がれ面(ダイパッド裏面)の変色箇所と正常箇所をEPMAで分析すると、変色箇所にはSi,C,Oが存在していることが分かります。しかし、Si,C,Oが単体で存在しているのか、結合して存在しているのかの区別がつきません。

Siプロファイル比較

Siを検出する波長付近のみを細かく分析していくと、変色箇所のSiプロファイルはピークが二つに分かれているのが分かります。Siの標準プロファイルとは形状が異なっていることから、変色箇所のSiは単体ではなく、CもしくはOと結合した状態で存在していることが分かります。しかし、これでは汚染物の同定には至りません。

 

Point
結合状態を調査するためには、別の分析手法が必要です。

結合状態が分かる分析手法は?

異常部から検出したSiやOがどのような結合状態なのか、X線光電子分光(XPS)で測定が 可能です。

XPS分析

XPS分析

Point
ダイパッドの剥がれ部分から、SiやOを検出しました。
 ↓
Si2pスペクトルを見ると、SiとOはSi-O結合した状態で存在していることが分かります。

汚染物を同定したい!

サンプルを物理的に破壊して露出した剥がれ面について、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)TOF-SIMSで分析することで、汚染源の特定が可能です。

ダイパッド露出面のFT-IR分析

ダイパッド露出面のFT-IR分析
赤外吸収スペクトル
ダイパッド露出面

 

フレーム露出面の外周付近からは、Si-C、Si-O由来のピークを検出し、ライブラリ検索の結果、ポリジメチルシロキサンの標準スペクトルと一致しました。
一方、中心付近からはフレーム下地由来の吸収ピークをのみ検出しています。

モールド樹脂露出面のTOF-SIMS分析

モールド樹脂露出面のTOF-SIMS分析
二次イオンイメージ像

 

モールド樹脂露出面の剥がれの顕著な箇所からは、シロキサンを顕著に検出しました。
一方、中心付近からは、モールド樹脂由来の二次イオンを検出しました。

 

Point
FT-IR分析およびTOF-SIMS分析の結果、シロキサンの付着により、モールド樹脂とダイパッドの密着性が阻害されて、剥がれが発生したことが分かりました。

剥がれを数値化するには・・・

「多層膜が剥がれてしまった!」「接着不良やボンディング不良が発生したが密着性が弱いのかな?」「表面処理を変えたけど剥がれやすくなっていないか?」など、性質の異なる薄膜を重ねた多層膜材料、はんだや接着剤などの接合界面では、剥がれやすさを数値化して比較することが重要です。

剥がれと代表的な密着性評価

剥がれの発生
剥がれの発生

剥がれの要因は、異種材料同士の接着力と試料への荷重(ストレス)のバランスと言われていますが、異種材料の複合体では、基板や膜構造、膜厚などの影響を受けるため、単一評価では定性的な評価の域を出るのが困難です。

密着性評価手法における精度と密着強度、測定領域
密着性評価手法における精度と密着強度
測定領域と密着性評価手法

 

(1) クロスカットテープテスト(Peel Test)

クロスカットテープテスト(Peel Test)イメージ
  • 簡便だが定量化が困難
  • スクリーニング など
(2) スクラッチテスト

スクラッチテストイメージ
  • 微小部測定可能
  • ウェーハベベル部の密着力 など
(3) 引張試験(セバスチャン法)

 

引張試験イメージ

  • 小さなサイズのサンプルで有効
  • シールドパッケージとモールド樹脂の密着力 など
(4) m-ELT法(modified - Edge Liftoff Test)

 

m-ELT法イメージ

  • 再現性が高く、同一試料間の比較に有効
  • 半導体における絶縁膜や金属膜の密着力 など

関連情報

[更新日:2018/07/03]

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