加熱発生ガス質量分析(TPD/MS)Temperature Programmed Desorption / Mass Spectrometry

材料・部品からの発生ガス挙動を把握することは、不具合発生を予測・推定する重要な手段の一つです。TPD/MSは、揮発しやすい成分や有機成分の定性・定量において、新たな情報をもたらします。

原理

TPD/MSは、2種の装置構成〔(1)昇温脱離ガス分析、(2)破壊脱離ガス分析(密閉容器内ガスや気泡成分)〕からなっています。
(1)は大気圧(He雰囲気)下で、試料を昇温し、発生するガスの温度に対する濃度変化を分析します。
(2)は、一定温度で、試料を破壊した際に発生するガスを分析します。
水分などの無機ガスや有機成分の定性・定量が可能です。

TPD/MS概略図
TPD/MS概略図

特徴

  • 温度に対する発生ガスの定性・定量が可能
  • 試料破壊時の発生ガスの分析が可能
  • 大気圧・He雰囲気での高感度測定
  • 無機成分・有機成分の定性・定量が可能
  • 加熱範囲:室温~1,000℃

TPD/MSとTDSの比較

  TPD/MS TDS
試料加熱雰囲気 大気圧(He) 真空(10-7Pa程度)
加熱方式 電気炉 赤外線照射
温度 室温~1,000℃
(雰囲気温度)
室温~1,100℃
(ステージ温度)
質量範囲(m/z) 2~800 1~199
試料サイズ 15mmID×
100mmまで
10mm×10mm
4mm(厚さ)まで
感度

※実際の試料内容により、ご相談させていただくことがあります

用途

  • 有機材料膜からの発生ガス評価
  • 液晶パネル内の水分量の分析
  • ナノカーボン材料の表面官能基評価
  • セメント材料からの脱離水分分析
  • Siウェーハ表面酸化膜からの脱離成分分析
  • 液晶パネル内の気泡の分析
  • ガラス内気泡の成分分析
パッケージ樹脂発生ガスやガラス内の気泡イメージ

事例 有機材料からの発生ガス

ソルダーレジスト基板からの発生ガスについて分析しました。
全発生ガスプロファイルより、80℃付近および180℃以降にガスの発生が見られました。
それぞれの温度域のマススペクトルより、主な発生ガスは、トルエンとジエチレングリコールモノエチルエーテルであることが分かりました。
各成分の発生ガスプロファイルより、残留溶媒由来のトルエンおよびジエチレングルコールモノエチルエーテルは、 それぞれ、50℃~120℃、120℃~240℃で発生していることが分かりました。
また、200℃以降には、樹脂の分解に起因すると思われるトルエンの発生が見られました。

ソルダーレジスト基板からの発生ガスプロファイル
ソルダーレジスト基板からの発生ガスプロファイル

事例 液晶パネル内気泡の成分

LCDパネル内に発生した気泡の分析を行いました。
破壊時の発生ガスプロファイルより算出した気泡およびリファレンス部のガスの定量結果より、気泡の主成分はCO2であることが分かりました。
LCDを構成している有機部材が熱処理で分解したことが推定されます。 よって、焼成工程(PI焼成やシール硬化)に要因があると考えられます。

気泡破壊時の発生ガスプロファイル
気泡破壊時の発生ガスプロファイル
破壊時発生ガスの定量結果 (μL/パネル)
1) 気泡の発生していないLCDパネルを破壊した際に発生したガス

事例 ナノカーボンの表面官能基

酸化グラフェンの発生ガスプロファイルからは、吸着水分量や官能基に関する情報が得られます。

官能基
酸化グラフェンの発生ガスプロファイル
酸化グラフェンの発生ガスプロファイル

試料ご提供元:岡山大学 異分野融合先端研究コア 准教授 仁科勇太 様

[ 更新日:2024/02/27 ]

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