樹脂の変色原因調査Analysis of Discoloration of Resin

エポキシ樹脂・アクリル樹脂などの高分子材料は、電子デバイス・自動車部品など多くの製品で使用されています。これらの高分子材料は、熱・光・薬品や水分などにより劣化し、変色を伴うものもあります。特に変色は、透過率の低下など特性低下の要因になり得ます。一般的に変色は、高分子骨格の一部が変性し、発色団と呼ばれる構造を生成することに起因しますが、それ以外に添加剤の構造変化や金属不純物の混入などによることが知られており、総合的な評価で現象を解明することが可能です。

樹脂の変色要因と主な解析手法

樹脂の変色要因と主な解析手法

事例 封止材の黄変劣化

(1) 骨格構造の変化の分析例

FT-IR分析

エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の黄変劣化の原因を調査するため、FT-IRによる解析を行いました。

骨格構造の変化の分析例

FT-IRでは劣化によって生成した官能基(エチレン基やカルボニル基などの発色団)を確認できます。

Py-GC/MSによる基材ポリマー分析(600℃)

Py-GC/MSは、多段階で昇温して発生したガスを分析します。

Py-GC/MSによる基材ポリマー分析

100℃~300℃に加熱した際に発生する成分を分析した後(後述)、600℃で熱分解させます。100℃~300℃では劣化により生成した低分子成分や添加剤の情報、600℃ではポリマーの変化についての情報が得られます。黄変樹脂と正常樹脂を比較した結果、600℃の熱分解挙動に有意差はありませんでした。

(2) 添加剤の構造変化の分析例

Py-GC/MSによる発生ガス分析(100~300℃)

黄変樹脂を100~300℃に加熱し分析

  • 紫外線吸収剤()が半分以下に減少
  • 光安定剤から発生したと推定される成分()も減少
  • 炭化水素系成分()が増加

 ↓
炭化水素系成分は、樹脂の分解により生成したものと推察され、前述の酸化劣化とともに、分解による劣化も進んでいることが示唆されました。

Py-GC/MSによる基材ポリマー分析

光安定剤の構造と量を確認するため、樹脂を溶媒で抽出して分析

LC/TOF-MSによる定性分析

LC/TOF-MSによる定性分析

LC/MS/MSによる光安定剤の定量分析

黄変樹脂   60μg/g
正常樹脂 520μg/g

黄変樹脂は、光安定剤の量が10分の1程度となっており、ラジカル捕捉機能が低下しているものと思われます。

事例 シリコーン系封止材の変色

(3) 不純物(金属)の混入の分析例

微量の金属の混入も変色の要因となることがあります。特に電子デバイスでは、金属電極から金属イオンが溶出して樹脂の変色を引き起こしたり、もともと樹脂に含まれる添加剤と金属錯体を形成して発色したりすることがあります。また、金属の溶出は変色以外にショートなど別の問題にもつながります。

Raman分析

Raman分析

非破壊でのRaman分析結果
変色樹脂は、硫酸塩に帰属される散乱ピークが確認されました。

さらにシリコーン樹脂内の金属成分についてICP-MSで定量分析した結果、変色した樹脂から微量のAgが検出され、電極材料であるAgの拡散が確認されました。

[ 更新日:2024/02/27 ]

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